不妊治療の保険適用に向けて活動をスタート

Fine会報誌 2007年冬号(vol.10) より 

不妊で悩んだりつらい思いをする人の負担が少しでも軽くなるように、Fineでは、さまざまな方面からのアプローチを考えています。そのひとつとして、不妊治療の保険適用を見据えた「FSH製剤排卵誘発保険適用への署名」活動を始めました。今回は、Fineのアンケート調査の結果とともに、そこに至る経緯を紹介します。
現在、人工授精や体外受精・顕微授精などの治療は、健康保険が適用されない自費診療で行なわれています。そのため、治療を受けたり継続するには経済的な負担が大きいのが現状です。
Fineでは、まず実態を探るべく、2005年5月にインターネットによる「不妊治療環境向上アンケート」を実施。この中で経済的負担や保険適用について聞き246人の方から回答を得ました。

●回答者は、ほぼ全員が治療を経験
回答者の年代は、31〜40歳が160名で全体の約65%を占めました。不妊治療をしていないのは2人だけで、ほぼ全員が治療の経験があります。このアンケートは、不妊患者のリアルな声、実感を集めたものといえるでしょう。


不妊治療の期間で一番多かったのは、「1年以上3年未満」の105人で、全体の約43%を占めました。次いで「3年以上5年未満」の46人(18.7%)。「5年以上10年未満」と「1年未満」は、ほぼ同数でした。そして、「10年以上」治療を続けている人も8人(3%)いました。
タイミング指導から人工授精へと、段階を踏んで治療を行なうステップアップ治療の場合、不妊原因にもよりますが妊娠に至らなければ、やがて医師から体外受精を提案されるでしょう。治療技術が進み、初診年齢が高まる傾向のある現在は、治療開始後1〜3年が体外受精を視野に入れる目安といえるようです。この調査では治療内容については聞いていませんが、これらの治療年数から回答者の多くが、自費診療となる人工授精や体外受精の経験者であることが推測されます。

●不妊治療に使った金額はどれくらい?

不妊治療に使った金額は、「100万円以下」が121人(49.2%)と最も多いものの「100万〜300万円」が76人で全体の1/3に及びました。「300万円以上」は48人で全体の約20%。ひとつの治療にこれほどの金額を要するのは、おそらくまれなことで、経済的負担の大きさを示しているといえるでしょう。
さらに、治療以外でも出費がかさむことが。「妊娠を目的とした漢方・鍼灸・健康食品を試したことがありますか?」の問いに、全体の3/4にあたる186人が「ある」と答えています。妊娠しやすい体づくりのために、治療と併行してさまざまなことにチャレンジする姿が垣間見えます。それらに費やした金額は、「50万円以下」が148人(79.6%)、「50万円以上100万円未満」が27人(14.5%)、「100万円以上」が6人(33.1%)でした。


●治療が進むほど負担が大きくなる
治療の経済的な負担には、不妊治療ならではの特殊性がうかがえます。
それは、妊娠しなければ治療を続けること、さらにお金のかかる高度治療を進める場合が多いこと、そして保険が適用されず治療するほど負担が大きくなることです。しかも、治療を受けても妊娠が保証されるわけではなく、逆に体外受精では回を重ねるほど妊娠率が低下するという現状も。
「経済的理由によって治療を中断した」、または「そう思ったことがある」のは146人、約60%に及びました。「お金があれば治療を続けたのに…」「もっと治療を続けたいけど、お金が続かない…」、そんな切ない声が聞こえてきそうです。

そこで、不妊治療の保険適用に関して聞いてみました。
保険適用を希望する人は221人、約90%という、多くの人が予想したであろう結果でした。
さまざまな意見の中には、「卵管閉塞等で体外受精が絶対に必要な人だけ」「子宮内膜症や卵管水腫などの病気の場合」「エコー代、注射代や薬代などは保険でカバーしてほしい」など、「条件付きで適用」という意見が多くありました。つまり、必ずしも全面的な適用を望むわけではないことがわかったのです。

また、保険適用した場合の医療機関の技術力(質)や水準を心配する声や、「保険が適用されると、自然妊娠が可能な人まで焦って治療を始めるのでは」「“授からなければ治療をするのが当たり前”という風潮になってしまうのでは」という危惧も。不妊という体験を通して、さまざまな思いや感情を抱いてきたみなさんならではの重たい言葉だと感じました。

現実問題として、治療を続けるためにはお金が必要です。特に高度治療になると、10万円単位でお金が飛んでいきます。それは、家計をやりくりして蓄えたものが、一瞬で消える感覚ではないでしょうか。女性の年齢が若いほうが体外受精の成功率は高いといえますが、若いカップルでは治療費を捻出できず諦めるケースもあるでしょう。可能性がある人ほど治療を受けられないという、矛盾を感じずにはいられません。
公的な支援としては、国と自治体とが折半して治療費の一部を補助する「特定不妊治療費助成制度」が、2004年からスタートしました。これは、体外受精・顕微授精の治療費の一部を「年間10万円、通算2年」助成するもので、2006年度には「通算5年」に延長されました。さらに見直しが進んでいます。
この変化の背景には、制度を利用する人が「もっと実態に根ざした助成を!」と声をあげたことが大きいようです。
Fineでも、雑誌『赤ちゃんが欲しい』(主婦の友社)との共同調査により550人以上の当事者の声を集め、同誌24号(2005年7月発行)で制度の問題点や改善希望を訴えました。

こうした社会の大きな動きと並行して、治療の一部だけでも保険が適用されれば、経済的負担がわずかでも軽くなるだろう……Fineでは、そう考えました。
そして、保険適用に関する署名活動を行なうことにしたのです。
「治療そのものに対する保険適用についてはスタッフ間でも意見が分かれています。総意としては不妊治療に関わるすべての“薬”と“検査”に対しては保険を適用してもらいたい、ということにまとまりました。さらに、助成金額の更なる引き上げも照準に入れるつもりです」とFine代表の今日ちゃん。
まず「注射と薬」としたのは、医療機関の技術力が問われない部分であることが大きいからだといいます。
この第一歩として、「FSH製剤排卵誘発保険適用への署名」を2006年12月からスタートしました。今後は適用範囲を広げ、「不妊治療に必要な薬剤と検査全般に対する保険適用の署名活動」を各地の不妊クリニックなど、関係機関に協力を呼びかけていく予定です。
    
(会員・T)