Fine会員の皆さま、こんにちは。私たちは、ウェブサイト及び携帯サイトやメールマガジン(以下、メルマガ)、また、気功やストレッチ、リラクゼーション法の教室運営を通して、不妊に悩むご夫婦の“妊娠しやすいカラダづくり”を応援させていただいています。
この度は会報誌への寄稿の機会をいただき、とても嬉しく思う半面、Fineでは各分野の専門の先生方やピア・カウンセラーの方々がご活躍になっていらっしゃるわけですから、私のお話がどれだけ皆さんのお役に立てるものなのかはなはだ心もとない限りなのですが、これまで不妊に悩む多くの方々と一緒に悩んだり、考えたりした経験から学んだことをお伝えできればと思います。
まずは、私たちがどんなことをしているのか、簡単にお話しします。
■きっかけ
当社(株式会社パートナーズ)は、サプリメントの販売や卸に携わっています。たまたま、小麦胚芽油を百貨店や医療機関に納めていたのですが、別名“生殖ビタミン”とよばれるビタミンEが、天然の形態で豊富に含まれることから、期せずして、多くの妊娠を望まれる方々に買っていただくようになり、妊娠する前の栄養素の摂取についてのご相談をいただくといったご縁ができました。
不妊に悩む方々とのさまざまなやりとりが増えていくにつれて、
・不妊の問題というのは、想像以上にデリケートな問題であること
・一見、不妊に関する情報はたくさんあるように思えるけれども、それは“治療情報”や“個
人の経験”が多く、本当に欲しい、また、必要とされている情報にアクセスするのは、思
ったほど簡単ではないこと
・情報不足や間違った情報、不適切な情報、誤解、思い込みが、必要以上に悩みや不安を大
きくしていること
・皆さん、一人で頑張っていること
そんなことを知ることになりました。
特に、外からは到底そうは見えない方でも、皆さん孤立していること、少なくとも、ご自身がそう感じていることには、考えさせられることがたくさんありました。
■私たちの活動
“現実的”には、お客さまの要望に応えるかたちで、“理想的”には、不妊に関する情報環境をよくしようと、2000年4月に、不妊の悩みを克服するためのきっかけやヒントになるような情報を提供させていただくべく、メルマガ「妊娠しやすいカラダづくり」をスタートしました。
現在、以下のウェブサイトやメルマガを通して情報を発信しています。
・メルマガ「妊娠しやすいカラダづくり」
(毎週末配信、購読者数:約6,500名)
・ウェブサイト「妊娠しやすいカラダづくり」(1日の訪問者数:約4,000名)
・ドコモ、エーユー、ソフトバンクの公式携帯サイト「おしえて!不妊ナビ」
(有料会員数:約2,500名)
・携帯向けメルマガ「コウノトリメール」(平日毎日配信、購読者数:600名)
また、2005年10月から妊娠しやすいカラダをつくるための「気功教室」をスタート。現在は、「ファーティリティレッスン」として、東京都内で、気功やストレッチ、マッサージ、各種リラクゼーション法のレッスンを、毎週土曜日と平日の夜に実施しています。現在、約20名の方々が、健全な妊娠、出産を目指して、カラダづくりやセルフケアのスキルを身につけるべく、取り組んでいます。これまでに、約200名の方が修了されました。
そして、私自身、学術的な知識を身につけるため、日本不妊カウンセリング学会の不妊カウンセラー養成講座を受講し、不妊カウンセラーの認定を受けました。レッスンに通われている方々からのさまざまな個別のご相談に応じたりもしています。ただし、カウンセリングというよりも、一緒に悩み、一緒に考えるといった感じです。
嬉しいことに、めでたく妊娠、出産された方々の発案で、妊婦&ママさんクラスも定期的に開催しています。妊婦さんは、健全な出産のため、新米ママにとっては、育児疲れの癒し、また、交流の場としても、活用されています。もちろん、本業?
のサプリメントも、妊娠を希望されていらっしゃる方々のための「ベイビー&ミー」シリーズをはじめとして、妊娠を望まれる方々に役立ちそうな製品を提供しています。とにかく、デリケートな時期ですから、安全第一を心掛けています。また、摂取プランのご相談にも応じています。
■自分にあっていると思えるものや自分が気持ちいいと感じられることを
ところで、不妊に悩む方々から、たびたび聞かれることがあります。それは、「○○は妊娠にいいの?」という質問です。○○に入るのは、たとえば、食べ物や巷で流行の栄養成分、いろいろな生活習慣、さらには、ちょっとオカルト的で怪しげなものまであったりします。
いいものはとりあえずは取り入れておきたい、試したい、そして、授かるためには努力を惜しみたくないという健気な気持ちのあらわれであり、また、後々後悔したくないという、人情としても当然のことと思います。
でも、そんな気持ちも場合によっては、行き過ぎてしまうことがあるように思います。例えば治療期間が長くなってくると、もしかしたら、自分だけが知らない“いいもの”があるのかも、それさえわかれば自分も授かることができるかもしれない、そういうパターンで物事を考えてしまうようになることがあります。真面目で、向上心旺盛な頑張り屋さんほど、そうなりがちなようです。たいていは、ちょっと悲しい結末になってしまいます。もしも“いいもの”に出会えても授かれなかったら、自分のせいにするしかありませんから。
とにかく不妊治療には、気持ちをのめりこませてしまう落とし穴がひそんでいるようです。最先端の生殖医療を施しても、治療が成功する確率は半分もいかないわけですから、ギャンブル的な要素に満ちているのは宿命的といえるのかもしれません。ですから、「今年中に」とか、「30代で」というような“確実さ”を求めてしまうと、悲しいかな、裏切られることのほうが多いわけです。
どうやら、授かるのに、これさえやっていれば絶対大丈夫ということはないようです。すべてのものには、プラス面とマイナス面があることを肝に銘じておくことが大事なのかもしれません。とにかく、あまり行き過ぎてしまうと、いい結果が得られないようです。バランスが大切ということでしょうか。
ということで、妊娠には何がいいのかについては、自分がいい、自分にあっていると思えるもの、気持ちよいと感じられることを取り入れればいいのではないでしょうか。まあ、それをみつけることも簡単なことではないかもしれませんが。結局は、いつ授かることができるのか、私たちの力ではコントロールできないわけです。ですから、どうこうしようとするよりも、明らかにマイナスになること(たばことか身体を冷やすとか)は避けつつ、あとは、たんたんと、自然体で、過ごすのがいいと思います。
■迷ったら
不妊治療は、そのスタートからいろいろな選択を迫られるものです。そもそも命にかかわるような緊急性がないわけですから、こうしなければならないというようなことはなく、いろいろな考え方や進め方があって当然です。どんな検査を受け、どんな治療を、どれくらいの回数繰り返すのか、二人で相談しながら治療を受けることになります。
それで、私たちのところに寄せられるご相談で多いのが、「迷っている」というものです。それどころか、「これから、どうすればいいのかわからなくなってしまった」という訴えも少なくありません。
考えてみれば、あらかじめ、確実に授かることができる治療法を知る方法が、今のところないわけですから、とにかくやってみなければわからないわけで、また、妊娠したいのはやまやまだけど、強い薬を飲むのに抵抗があったり、妊娠率の高い治療を受けるのは怖かったりします。さらには、パートナーと感覚やペースがずれていたりすることもよくあることです。
後悔のない選択が大切なのですが、不妊治療は複雑でわかりにくいものです。なんとなくではなく、二人できちんと手順を踏んで、相談されるべきです。
・選択肢はできるだけたくさん出すようにする
たとえば、3センチと5センチのものを選ぶ際に、1センチと10センチの選択肢もあったほうが判断しすいと思うのです。極端な選択肢があったほうが、自分たちは、本当はどうしたいのかがわかりやすくなるかもしれないからです。
ですから、選択肢はできるだけたくさん出すことが大切です。
・それぞれの選択肢の内容やそれぞれの違いを理解する
これは、ちょっと勉強しなければいけないかもしれません。意外にも何かを選ぶ場合、それぞれの選択肢を、表面的な印象や思い込みだけでとらえてしまっていることが少なくありません。その場合、問題は明らかに知識不足です。
例えば、人工授精という言葉の印象から抵抗感があったけれど、実際にどんなことをする治療なのかを知ると印象が変わったりすることがよくあります。
・“どうするか”を決めるとき、“何を”をはっきりさせる
迷ったら、目的をハッキリさせるということです。例えば、ある治療を受けるかどうかを決める場合に、何のために受けるのかをハッキリさせると、自分たちにとっての必要度や緊急度が理解でき、判断しやすくなるかもしれません。
・好きか嫌いか、気が進むか進まないかという基準もあり
医学的、データ的にどうかということだけでなく、どうしたいのか、またどうしたくないのかで決めてもよいということです。決して、こうしなければならないということはありませんから。
■ストレスを感じたら
3年前に気功教室を始めて、ストレスを自覚していない人が、意外に少なくないことに気付きました。覚悟や緊張感をもって治療を受けているからかもしれません。スウェーデンで、体外受精を受けている夫婦のうち、女性の30.8%、男性の10.2%は、何らかの精神障害と診断され、それに対して、何らかの対策を講じていたのは、5人に1人だったとの報告があります(※1)。まさに、ストレスを自覚していない人が多いことがうかがえます。医療費の公的補助が大きいスウェーデンでさえこのような状況です。
ストレスとうまく付き合うことはとても最重要テーマのひとつでしょう。そもそも、現代社会は高ストレス下にあるにもかかわらず、意外にリラクゼーション法の訓練を受けた経験のある方はほとんどいません。
ただし訓練とは特別なセミナーや研修を受けたりすることではなく、ストレスを和らげてくれる「スキルをたくさん持つ」こと、そして、それらを「時と場合に応じて、使えるようになる」こと、これに尽きます。
おそらく、最も手軽かつ有効なスキルは、呼吸法でしょう。また気功やヨガ、ストレッチ、ウォーキング、夫婦でやるペアマッサージなどを、さまざまなバリエーションで、自分にあったやり方を身につけておくことがポイントです。
例えば、簡単な呼吸法をご紹介しましょう。
1)椅子にすわって、背筋を伸ばし、脱力して、顔をゆるめます。
2)鼻から、ゆっくりと、息を吸います。
3)吸いおわったら、2〜3秒、息を止めます。
4)力を入れないで、少しずつ、ゆっくりと、鼻から吐いていきます。
5)出しきったら、少し息を止めます。
6)15回ほど繰り返します。
人によっては、うまくコツがつかめないということもあるかもしれませんが、
こんな簡単なものでも、クリニックでの待ち時間や治療を受ける前に実践するだけで、確実に、気持ちが落ち着くようになります。
自分たちの生活環境や好みにあった“簡単な”スキルを、“たくさんの”バリエーションでマスターしておく、それぞれのシチュエーションに応じて使いこなすことです。出たとこ勝負の丸腰では心もとないことこのうえありません。
■くじけそうになったら
ある研究によりますと、不妊であることで感じる気持ちの落ち込みのレベルはガンや心臓病、エイズ患者が病気を宣告された時の気持ちの落ち込みと同じくらいのレベルであるといわれています(※2)。もちろん、不妊の悩みと一口にいっても、その程度や状況はさまざまでしょうが、不妊の悩みとは、その夫婦にとって、これまでの人生最大の危機であるといっても過言ではないわけです。
つまり、不妊の悩みを克服するには、場合によっては相当困難なことで、誰しも自分の力だけでは、どうにもくじけそうになっても当然のことです。
そんな時、どうするか? 現時点での結論は、「力を合わせること」です。
私たちのレッスンに参加されての感想として、「悩んでいるのは自分だけでなかったことがわかって、とても気が楽になった」、「ここでは、誰に気がねすることなく、不妊のことが話せるのが一番嬉しい」とおっしゃいます。もちろん、単に集まるというだけでなく、運営手法についても、いろいろ試行錯誤した結果でもあるのかもしれませんが、“チームになることのパワー”をひしひしと感じます。
反対にいうと、それだけ、一人で孤軍奮闘していたのかもしれません。不妊治療を受けることはとても怖い、逃げ出したい、でも、赤ちゃんが欲しいから我慢して頑張る。でも、誰にも言えないことでしょうし、話したからといって同情や理解を示してくれても、共感されることは少ないでしょう。
とにかく、力が入っています。ですから、レッスンの回数を重ねるごとに、力が抜けていくのがハッキリとわかります。これもチームの力のなせる業です。
皆さんの中で、もしも、一人で頑張っている方がいれば、Fineが主催するさまざまな集まりに、ぜひ、参加してみてください。きっと、チームFine(勝手に命名しましたが)からもらえる大きな力と勇気に驚かれることと思います。
■最後に
思うように授からない期間は、悩み、焦り、翻ろうされ、自分たちの無力さを嘆き、ただただ辛く、悲しい経験でしかないように思ってしまうかもしれません。また、不妊治療は、先の見えないトンネルを進むようだと言われます。
でも、できることはいろいろあります。
まずは、先が見えなくても、正しい知識や専門家、仲間の存在が、先を照らしてくれるようになるでしょう。
そして、どこから電車に乗って、どこで降りるのか、そして、それは各駅停車なのか、急行、それとも特急なのか、パートナーと一緒に決めれば、少しは不安が和らぐでしょう。
また、電車の窓の外は、一見何も見えなくても、少し見る角度を変えたり、ずらしたり、そして、パートナーと二人で眺めることで、風景を楽しめるようになるかもしれません。
いろいろ、偉そうにお話ししてきましたが、どれもこれも、一筋縄ではいかないかもしれません。でも、皆さんの赤ちゃん待ちの期間が、必ず、人生の宝物になることを信じています。
最後に、このような機会をご用意いただいたFineスタッフの皆さんに深くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
※1)Prevalence of psychiatric disorders in infertile women and men undergoing in vitro fertilization treatment Human Reproduction 2008 23(9);2056-2063
※2)The Psychological Impact of Infertility Journal of Psychosomatic Obstetrics
and Gynecology 14 (1993);45-52.
|