現在の日本の社会では、表面的な現象や思い込み、さらには、膨大なネット情報などを十分な吟味なく信じ、結果として大きな落とし穴にはまったり、後悔することにつながっている場合が非常に多いと感じます。世の中で広く受け入れられ、当たり前と考えられることが、実は大きな誤りであったり、事実に反することが極めて多いと感じます。つまり、「常識の非常識」です。
このことは、お子さんを希望されるご夫婦にも当てはまります。ご夫婦の間には、妊娠が起こって当然。妊娠できたら、元気な赤ちゃんが生まれることが常識。世間では、妊娠が起こらないのは、元気な赤ちゃんが生まれないことは、「異常だ」「病気だ」「不妊だ」「普通じゃない」と言います。
本当にそうでしょうか? 私は、これこそが「常識の非常識」と思います。
妊娠は、無数の奇跡的幸運が重なり、完全無欠な過程を経て成立するものですし、だからこそ、 赤ちゃんは、 いつの世でも、神様から授かるかけがえのない生命であるはずです。
生殖医療の研究と普及によって、私たちは様々な生命誕生のからくりを知ることができるようになりましたが、私たちが知り得た情報は、そのわずか一部でしかないことを肝に銘じなければならず、その多くはいまだ神秘のブラックボックスです。しかし、有り難いことに、知り得た情報、開発した技術を駆使することにより、色んな原因により妊娠が起こりにくいご夫婦に、赤ちゃんの夢を叶えて差し上げることができるようになりました。
私は、赤ちゃんの誕生は「奇跡」と思っていますが、幸いにも生殖医療の応用により「比較的確率の高い奇跡」と思えるようになりました。私たちが、何より考えるべきことは、妊娠を、赤ちゃんの誕生を「常識」と捉えず、「かけがえのない幸運」と捉え、その夢が叶うよう最善を尽くして、前方思考で進んでいくことだと思います。
今回の講演が、「かけがえのない幸運」の中身を吟味し、「かけがえのない生命」の素晴らしさを実感して頂き、その取り組みが楽しく、ワクワクし、「夢は叶う!」と思えるような前方思考となって頂ける契機になればと思います。
そして、さらに、もう一つ大切なことは、そのような取り組みを通して、お互いがお互いの苦痛や喜びを共有し、尊敬し合い、支え合えるような、そんな優しい社会の実現に繋がることをひたすら願っています。
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