ドクターQ/A

正会員の皆さんからお寄せいただいた質問とJISARTのドクターによる回答をご紹介していきます

正会員の特典として、第一線で活躍する不妊治療のエキスパートに質問ができます。

*この「ドクターQ&A」は、Fineの活動に賛同し協力くださるJISARTのドクターが、会員の皆さんから寄せられた質問に回答するコーナーです。主治医の意見以外にもたくさんのドクターの意見が聞けるよう、原則としてひとりの質問に二人でそれぞれお答えいただくという画期的な手法をご承諾いただいています。参考意見のひとつとしてお考えください。

*お寄せいただいたご質問の中から、いくつかご紹介いたします(更新期日は未定です)

*質問をいただいてから、回答がサイトに掲載されるまでにはたくさんの作業が必要となるため、1カ月以上かかります。また、お寄せいただいたご質問のすべてにはお答えできない可能性があります。ドクターまたはFineから質問者への直接回答はありません。あらかじめご了承ください。

*いただいた質問とドクターからの回答は、サイトのQ&Aのコーナーに掲載させていただきます。

*掲載する際には、もちろんメールアドレス・ハンドルネームは絶対に出しません。

*回答は実際に受診しての診断ではなく、文章でいただいた情報のみによる、それぞれのドクターの個人的な見解となりますので、正式なセカンドオピニオンとは異なります。このサイトで回答した内容については回答者およびサイト責任者は一切責任を負いません。内容についての判断は自己責任の下で行なってください。また治療にあたっては必ず主治医とご相談の上、ご自身で最終決定をなさることをお勧めいたします。

*具体的なおすすめ病院名などのご紹介はできません。



担当Dr.
質問1 石川 元春先生   いしかわクリニック 宇津宮 隆史先生 セント・ルカ産婦人科
質問2 小田原 靖先生 ファティリティ・クリニック・東京 神谷 博文先生   神谷レディースクリニック
質問3 高橋 克彦先生 広島HARTクリニック 吉田 淳先生     木場公園クリニック
質問4 田中 温先生    セントマザー産婦人科医院 辰巳 賢一先生   梅ヶ丘産婦人科
質問5 森本 義晴先生 IVFなんばクリニック 山下 正紀先生   山下レディースクリニック
質問6 見尾 保幸先生 ミオ・ファティリティ・クリニック 蔵本 武志先生   蔵本ウイメンズクリニック
質問7   京野 廣一先生 レディースクリニック京野


 質問1   グレードの良い受精卵を戻しても妊娠しません                

グレードの良い受精卵を戻しても妊娠しないのですが、他にどんな治療をしたら良いでしょうか?

検査では原因がなかったのですが、IVFに進んだところ受精障害とわかりました。ICSIで受精するようになり、グレードの良い受精卵もできますが、その後の育ちも良くない気がします。今後は、リンパ球の検査やAHAなどをお願いしようかと考えているのですが、他にどんなことをすれば良いか教えてください。


 Sさん 37歳

 
ご主人の年齢:37歳
 生理周期:27日
 不妊原因:子宮内膜症
   男性不妊 受精障害
 妊娠経験:なし

<治療歴>
35歳で一通り検査、左卵巣の内膜症2cm以外問題なし
36歳からタイミング4カ月、AIH5回
37歳から体外。IVF2個ET、ICSI1個ET、凍結胚盤胞1個ET。ICSI3個ET。刺激周期で、15個前後採卵、平均10個良性卵、IVFでは2個のみ受精、ICSIでは平均8個受精。ETはほぼ常にグレードT(4細胞期)。胚盤胞になるのは7個→2個、5個→1個。
<現在の治療>
ICSI、次回は凍結胚盤胞ET
<治療使用薬>
フェルティノームP(150単位×10日間)スプレキュア、HCG、プロゲストン(50mg×12日間)、オオホルミンルテウムデポー125mg
ET時は、HCG、ヒスロン、プレマリン

   回答  石川Dr.

良好胚ができるので、あと一歩のところで苦労されていますね。

子宮鏡検査はされましたか?子宮鏡で着床の障害になる、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、癒着など、子宮内腔の異常が発見されることも多く、この場合には子宮の着床環境を(通常日帰りで簡単な)手術で改善することができます。 リンパ球の検査(HLAタイピングの検査のことと思います)を受け、リンパ球輸血を考えられているようですね。リンパ球輸血は一般的に習慣(性)流産の方に行なわれる治療ですが、その有効性を疑う報告が多いようです。「限られた状況の方の流産を予防するのに有効かもしれない」程度の考え方が一般的です。ご質問の方は流産をされているわけではないので、リンパ球の検査は不要と考えます。

AHA(アシステッド ハッチング)の有効性も意見が分かれています。石川個人としては、培養を続けて良好な胚盤胞になっても、ハッチングが起こらず変性した受精卵を見たことがあるので、AHAは有効と考えております。主治医の先生とご相談してみてください。

また、子宮内膜症を併発されているとのことですので、短期間(3カ月程度)のボンゾールやスプレキュアなどのGnRHa製剤を施行し、その後再度挑戦されるのも一つの方法と思います(この方法も有効性が証明されていませんが、私は複数回ARTを受けられている方に有効と考えております)。

顕微鏡で観察して、形態が良好でも染色体の異常がある受精卵は意外と多く見られます。ご夫婦の染色体検査を受けられ、今後の治療の参考にされてはいかがでしょうか。ただし、染色体に異常が見つかった場合、治療法が無いのが欠点です。
あと、一歩です。がんばってください。

   回答  宇津宮Dr.

このカップルは男性因子による不妊症が前面にあります。当院のデータでは他の不妊原因に比べ、男性因子が原因で行なう体外受精(顕微授精)は妊娠率が低く、また妊娠に成功するまでARTにチャレンジする回数が多い傾向にあります。よってこの事実を理解することが必要です。
さて、この方は10個前後、良好卵が採れていますから最終的な妊娠率は高いと考えます。なぜなら精子がよくなくても卵子が多ければそのうち1個でもよい精子で受精する確率が高くなるからです。
しかし胚の分割は2日目までは卵子の遺伝子のみで進行し、3日目から精子の遺伝子も加わるといわれています。よって2〜3日目までに良好胚であってもその後の経過はわかりません。よって胚盤胞移植が期待されるのですが、当院の500名以上の前方視的比較検討では通常の分割期胚移植と胚盤胞期移植で妊娠率に差はありませんでした。これは現在ではまだまだ胚盤胞期の培養環境が完全で無いからと思われます。

<改良点>
AHAもよいでしょう。しかしAHAは前方視的検討がされていないことで、その有効性に疑問があります。また、凍結胚は融解後、透明帯が硬くなるのでAHAが有効といわれています。
リンパ球の検査は(リンパ免疫のことと思いますが)、日本では以前から盛んに行なわれてきましたが、10数年前にアメリカ不妊学会でかなりの規模の前方視的検討が行なわれ、有効性は無いと結論されました。さらに最近でもある少数の患者さんのグループには有効という報告が出ていますが、その程度です。
最近ではGnRHa(スプレキュアなど)に変わり、アンタゴニスト(セトロタイドなど)のほうが、卵に与える影響が少なくて質がよいといわれるようになりましたのでそれを試すこともよいかと思います。しかしアンタゴニストは現在、未承認ですので個人輸入する必要があります。担当医に相談してください。
また、最近ではインシュリンの感受性を上げる薬が卵子の質の向上に役立つという報告もあります。しかしこれも統計学的にはっきりとした研究結果(前方視的検討)ではありません。

男性因子で精子の数や量はよいのに奇形率や運動率が悪い場合、精子が産生されて精管膨大部や精嚢に蓄えられている間に細菌などによってダメージを受けていることが考えられます。その場合は当院では精管から直接精子を吸引採取し、それをICSIに用いて良好な成績が得られています。これは泌尿器科医師が必要になります。

とにかく男性因子は気長にがんばることにつきます。


▲UP



質問2    <1>AIHの回数は何回くらいが適当ですか?
      <2>排卵誘発の副作用について教えてください
      <3>受精卵のグレードはどういう基準で決まるのですか?

<1>AIHの回数は何回ぐらいやったらいいですか?

<2>排卵誘発剤の副作用、本ではいろいろ書かれているけれど、実際に患者が訴えてくる症状は何が多いのでしょうか?(私は少量の錠剤で、視覚異常が起こる、これはあり得ることみたいだけど身近では聞かない)

<3>受精卵のグレードはどう考えたらよいでしょうか?グレードの付け方の基準はあるのでしょうか?医師によってグレードの判断基準が違うのでしょうか。


 Kさん 38歳

 ご主人の年齢:45歳
 生理周期:
もともとは26〜28日
         今は24〜26日

 不妊原因:
  機能性不妊(原因不明)
 妊娠経験:あり
 妊娠の結果:
   1回目:9週で繋留流産。
   2回目:7週で心拍停止、
        染色体異常。
3回目:7週で繋留流産。

<治療歴>
治療歴、5年くらい
31歳に結婚、一年後に周りからうるさく言われて、一般の産婦人科へ。
検査はホルモン検査のみ、信頼できず半年でやめる。
32歳頃から専門医での治療開始 不妊専門医へ。
タイミング、AIH、IVFと順番に治療を進めた。ラパロ以外の検査は経験。
36〜7歳ぐらいに、いろいろあって治療を休憩中。

<現在の治療>
休憩中

<治療使用薬>
ビタミンC・E、セロフェン、デュファストン、フストジル、当帰芍薬散(ツムラ)、スプレキュア、膣座薬(黄体ホルモン)
注射:HCG、FSH(フェルティノームP)、HMG日研、ヒュメゴン注射
排卵誘発剤の注射はIVFのみ、誘発剤もタイミングの後半、AIHの後半ぐらいから少量。


   回答  神谷Dr.

<1>
AIHで妊娠する方は、6回以内で90%以上の方が妊娠します。回数は、6回を目途として考えますが、38歳という年齢を考慮すれば4回ほどで次の治療にステップアップしてもよいかと思われます。
<2>
排卵誘発剤の副作用で一番重篤なものは、卵巣過剰刺激症候群です。これは腹部の膨満感、尿量の減少、体重の増加から始まり、多量な腹水の貯留で呼吸困難や血栓症を起こすこともあります。絶対に避けなければならない副作用で早期の治療が必要です。その他の合併症には、それほど重篤になるものはありません。
<3>
受精卵のグレードは、分割のスピードや割球の均一性、フラグメント(※1)の有無などで決まります。Veeckの分類など様々な基準がありますが、各施設でこれら3つの要素を用いて独自の基準をつくっている場合が多いです。
Kさんの妊娠歴を拝見しますと、3回連続して流産しています。不妊症というより、妊娠してもそれが継続せず流産してしまう、習慣性流産です。習慣性流産の原因は十分に解明されていませんが、ホルモンの内分泌、子宮の奇形、凝固異常、自己免疫疾患(抗リン脂質抗体症候群)、ご夫婦の染色体、免疫学的妊娠維持機構などの検査を受けることをおすすめします。


(※1) 分割卵の中にある泡のような小さな細胞のことをいう。フラグメントが少ない受精卵ほど胚の質がよいといわれている。

  回答  小田原Dr.

染色体の異常がどういったものなのかが記載されていないのですが、染色体の数が一本多いなど(例:21トリソミーなど)あきらかに胎児側の原因と考えられる結果であれば、たまたまということになりますが、転座、逆位といったごく一部分の異常によるものであれば、ご両親の染色体検査も必要です。いずれにしても流産が3回ですから、不育症の検査を一通り行なう必要があると思います。

<1>
AIHの回数については、当院では6回を限度として行なっています。ご質問にある妊娠が治療によるものなのかがはっきりしませんが、不育検査を行なった後に計6回を上限としてAIHを行なっても良いかと思います。その場合、排卵や子宮内膜の状態によっては卵巣刺激を併用してよろしいと思います。
<2>
卵巣刺激に用いるクロミッドやHMGに対する副作用として、吐き気や頭痛、胃痛、視覚異常といった症状がおこることがあります。ほとんどは軽いものですし、前もって予測するのは困難ですから、症状があったら、その時点で注射を変更するなどの検討をするということでよろしいと思います。
<3>
受精卵のグレードで一番多く用いられているのはVeeckの分類で、良い順に1、2、3、4となります。当院ではオーストラリアの分類を用い、良い順に3、2、1になります。他にも独自の分類法がありますので、主治医にお尋ねください。


▲UP



質問3    <1>移植当日のE2・P4の適正数値は?
      <2>融解時戻りが悪いのですが卵の質の問題でしょうか?
      <3>精子の数が少ないことも融解に耐えられない理由でしょうか?

凍結胚盤胞移植を繰り返しています。凍結時は、充分な大きさで凍結できるそうですが、融解すると戻りが悪いそうで移植できるも、血液検査による判定日には、hCGゼロ判定が多いです。

<1> 移植当日の、E2やP4の適正数値は、どのぐらいが平均なのでしょうか?
<2> また、融解すると戻りが悪いということは、卵の質の問題なのでしょうか?
<3> もともと男性不妊なのですが(脳腫瘍摘出いらい、嗅覚神経なし)、数年前は微量ながらも数値が測れていましたが、最近は、測定不可能なぐらいの量しか採れないし、1匹〜10匹程度しかいないようで不安です。こういうことも、融解に耐えられない理由になるのでしょうか?


 Mさん 36歳

 ご主人の年齢:36歳
 生理周期:無月経
 (ピルを飲まないと生理が
  来ない)
 不妊原因:排卵障害、
  多嚢胞、抗精子抗体、
  男性不妊  
 妊娠経験:あり
 妊娠の結果:
  化学的流産2回、死産1回
  


<治療歴>
結婚10年、治療歴8年(ICSIを始めて5年)不妊治療のきっかけは、生理が全く来なくなり婦人科を受診したところ、無排卵・PCOSがわかり、タイミング指導開始。男性不妊も判明し、ICSIでしか授からないと宣言されました。

<現在の治療>
自然周期ICSI。
採卵4回(1回に30個以上採れてしまい、その後はその凍結ET&BT(※)×5回。フレッシュETを1回。一度、空の卵胞。その後凍結BT×2回)

<治療使用薬>

クロミッド、デュファストン、プレマリン、プレドニン、hMG、プラノバール

(※) 胚盤胞移植(ブラストシストET)

   回答  高橋Dr.

<1>
一般にE2値は200pg/ml以上が排卵期の値ですが、ホルモンに対する感受性が人によって違いますので数値はあまり重要ではなく、子宮内膜の厚さが10mm以上に達していれば胚移植に適していると考えます。P4は 10ng/ml以上であれば十分と考えます。
<2>
融解が悪いのは胚盤胞の質が悪いか、凍結融解技術が悪いかのいずれかが考えられます。胚盤胞の凍結法は比較的新しい技術ですので、施設による成績の差は大きいのが現状です。HARTクリニックにおける凍結胚盤胞融解後生存率は85%、妊娠率は58%(2004年度、400周期)
<3>
一般に精子の遺伝子に異常があれば、ICSIで授精させても8分割くらいで発育が停止し、胚盤胞まで発達しません。胚盤胞まで発達しているのなら精子は問題ないと考えて良いと思われます。

  回答  吉田Dr.

まず男性不妊症の専門外来を受診される必要があると思います。もともと男性不妊ということですが脳腫瘍を摘出後、急激に精液の所見が悪くなってはいませんか。もしそうだとしたら、下垂体から分泌しているFSH(精子を作りなさいと指令を出しているホルモン)とLH(男性ホルモンを作りなさいと指令を出しているホルモン)が低下している可能性があります。FSHとLHが低下しているときは、hMGを週に3回、hCGを週に1回使用すると精子数が上昇する可能性があります。
次に、奥さまはPCOSですので、糖尿病の治療薬であるグリコラン(メトフォルミン)を使用しながら卵巣刺激を行なうと卵の質が向上し、妊娠率が上昇、流産率が低下する可能性があります。もし、私が主治医であれば前周期にピルを使用して、スプレキュアではなくアンタゴニスト(セトロタイド)とhMGを使用した卵巣刺激を行なうと思います。つまり精子と卵の質を向上させてARTを行なうことが重要なのです。

<1>
新鮮胚移植の時はE2やP4値をコントロールすることはできません。以前は新鮮胚移植の時は採卵日からプロゲステロンの補充をしていましたが、いろいろなデータ分析から木場公園クリニックでは採卵後2日後からプロゲステロンを補充しています。
<2>
卵の質が問題ということもありますし、凍結・融解のやり方(テクニック)が悪いということもあります。
<3>
融解に耐えられない理由の一つなるとは思いますが、それが主原因ではないと思います。


▲UP



質問4     <1>私はスプレキュアが効かない体質なのでしょうか?
       <2>どうしたら排卵をコントロールして採卵まで持っていけますか?

今まで、3回採卵して2回胚移植まで進みましたが、排卵タイミングのコントロールが上手くいきません。2回ともスプレキュアをして36時間後に採卵したところ、2度ともすでに排卵してしまっていて、卵1個しか残っていないありさまです。今回ロングプロトコールで、初めてスプレキュアを毎日3回ずつしたのですが、生理5日目で黄体ホルモンが卵巣に残っていたため、hMGによる排卵誘発を1週間遅らせたところ、すでに卵胞が育っていて自然排卵直前の段階になっていました。先生は、鼻炎でスプレキュアが効かなかったのか?と首をかしげていましたが、鼻炎の自覚症状はありません。

 Mさん 39歳

 ご主人の年齢:44歳
 生理周期:28日
 不妊原因:卵管障害
 妊娠経験:あり
 妊娠の結果:
  心拍確認後、8週で流産

<治療歴>
8カ月。
最初の検査で、両卵管が機能してないことがわかり、すぐに体外受精開始。
1回目の体外受精は、hMG3本で卵巣過剰刺激症候群で中止。
2回目、クロミッドで妊娠せず。
3回目、アリミデックスとフェルティノームPで妊娠、流産。
4回目、アリミデックスとフェルティノームP、受精せず。

<現在の治療>
身体を休めるために、6月からヒスロンとプレマリンを飲みながらロングプロトコールをしていたところ、7月の周期に入ってもスプレキュアが効いてないのか、排卵コントロールが上手くいかず、もう1周期待つことになりました。
7月末頃の次周期までロングプロトコールを継続。

<治療使用薬>
クロミッド、hMG、アリミデックス、フェルティノームP、プレマリン、ヒスロン、
スプレキュア

   回答  田中Dr.

今までのご苦労、心よりお察し申し上げます。何とか良い結果が出るように、頑張りましょう。妊娠率を高めるためにやはり、採取できる卵の数が多い方が有利です。一回目で卵巣が腫れていたということですが、卵巣過剰刺激症候群になるということは、反応が非常に良いということですから、是非この方法で行なってみてはどうでしょうか。2回目・3回目・4回目はスプレキュアを使用して、このお手紙の中に書いてある、お薬と注射をされたのでしょうか。もし、そうであるならばスプレキュアと他の注射で、行なってみてはどうでしょうか。また卵巣がどの程度腫れるかということは、月経が始まってすぐ、卵巣を経膣超音波でみますと何個ぐらい卵ができるかということは、ある程度予測できますよ。是非その辺を、詳しく教えて下さい。何とか良い卵が、数多く採れる方法が必ずみつかると思いますよ。スプレキュアが効かないのではなくて、スプレキュアと注射の組み合わせの良い方法がみつかっていないのではないでしょうか。

  回答  辰巳Dr.

1回目の体外受精でhMG 3本で卵巣過剰刺激症候群になったことや、その後の治療周期でクロミッドやアリミデックス+フェルチノームPという卵巣刺激法を選択されていることなどからみて、多嚢胞性卵巣があり卵巣の反応が強い(多くの卵胞ができてしまう)患者さんだと思います。このような方には、スプレキュアのロング法やショート法より、これまでに選択されてきた卵巣刺激の方が副作用が少なくてすむのです。採卵時にすでに排卵していたとのことですが、これは採卵前のスプレキュアをした際に、すでにLHサージが起こってしまっていたためでしょう。このような場合には、LHサージを抑えるGnRHアンタゴニストを併用するのが最も良い方法です。卵巣過剰刺激症候群などの副作用を抑えながら、LHサージも抑制することができます。しかしGnRHアンタゴニストは輸入しないと手に入らない薬なので、どこの病院でも使えるという訳ではありません。
GnRHアンタゴニストが使えない場合には、次の選択として、スプレキュアのロングプロトコールになります。確かにスプレキュアが効きにくい方もいますが、スプレキュアの開始時期の卵巣の状態により今回のような反応が起こることもあります。ヒスロンとプレマリンの服用方法がわかりませんが、むしろピルを使って前周期の排卵をしっかり抑えるなどの方法をとれば、スプレキュアに正常に反応するのではないかと思います。


▲UP



質問5   MLC検査について教えてください

現在、医師からMLC検査(*1)をすすめられています。採卵では、毎回10個平均で卵が採れ、8個平均で授精します。年齢的にも殻が硬いのでICSIを選択しています。優良新鮮胚を移植後、残りは胚盤胞まで培養し、3〜4個凍結できます。凍結胚盤胞も、フラグメントゼロの可もなく不可もなく、5段階のうち、グレードは3bb平均です。AIH施行。AIHの時に、一度初期流産。凍結胚盤胞移植で、一度だけ採血でわずかなhCGの値が出ました。この段階で、MLC検査は必要でしょうか?仮に、リンパ球移植をして、その効果はどれ位なのでしょうか?抗核抗体40倍(*2)という数値は、ステロイド錠を服用したほうがいいのでしょうか?医師によって、意見や見解が分かれるようで、今後の治療に迷っています。

(*1)MLC検査:夫婦間リンパ球混合培養(MLC) mixed lymphocyte culture test 
(*2)抗核抗体40倍:抗核抗体とは、自分の細胞の核内に含まれる物質に対しての自己抗体の総称
   (検査にもよりますが、20倍→40倍→80倍→160倍→320倍という結果があり40倍までは基準範囲内)


 Cさん 39歳

 ご主人の年齢:39歳
 生理周期:28日
 不妊原因:
  機能性不妊(原因不明) 
 妊娠経験:なし
 妊娠の結果:
  


<治療歴>
治療歴8年(お休み期間2年)
結婚2年経っても妊娠に至らず、不安に思い婦人科を受診。
基本的な検査(卵管造影、精子検査含む)の結果、異常は見当たりませんでした。
その後、AIH7回。ICSI採卵4回(新鮮胚ET4回、凍結胚盤胞ET3回)

<現在の治療>
凍結胚盤胞ET待ち。
染色体検査異常なし。 
抗体・血液凝固系検査:抗核抗体40倍の検査結果が出たばかりです。

<治療使用薬>
注射:フェルティノーム、ヒュメゴン、日研hMG、パーゴグリーン、アンタゴニスト、
hCG、プロゲステロン
飲み薬:プラノバール、プレマリン、エストレース、デカトロン、デュファストン、
ルトラール
その他:エストラーナ、膣座薬


   回答  森本Dr.

MLCの着床障害への必要性は私も免疫学会の要請で検討しましたが依然として不明です。
しかし、当院では数多く実施しており、手ごたえを得ておりますので受けられることは無駄ではないでしょう。
この抗核抗体の値では当院ではステロイドは使用しません。

  回答  山下Dr.

MLC・MLR(*3)などと呼ばれるリンパ球混合培養試験ですが、この検査は、一般的には3回以上の初期流産を繰り返す、習慣性流産の原因検索のひとつとして行なわれてきたものです。
一度AIHでの初期流産をされておられますが、2回目のものははっきりしないということもありますし、いわゆる習慣性流産とはいえません。とすれば、担当の医師からすすめられた理由というのは、戻す胚自体は悪くないのになかなか妊娠に至らない着床不全の原因検索の一環としてということでしょうね。
免疫応答不全により初期流産のみならず、着床不全も引き起こされるという解釈もあるようですが、これに関してははっきりしたエビデンス(*4)は得られていないように思います。免疫療法の習慣性流産に対する有効性さえ確立したものとはいえない状況ですので、この場合の効果のほどはかなり不確実といわざるを得ないかもしれません。私自身は否定的に捉えておりますが、医師によって意見が違うのはやむを得ないでしょうね。
抗核抗体については、他の抗体も調べたうえでこれだけ陽性になったのか、スクリーニング的(*5)に単発で検査されたのかで違いますが、一般的には抗リン脂質抗体やその他の自己免疫抗体なども陰性で、抗核抗体だけ陽性で臨床症状もないような場合に、すぐさまステロイドを使ったほうがいいとはあまりすすめられないように思います。
確立した話ではない中での決断ですので、いろいろな意見を聞かれた後、最後はご夫婦で決めてください。


(*3)MLR:リンパ球混合培養反応(MLR) mixed lymphocyte reaction
(*4)エビデンス:明らかな根拠に基づいた医療
(*5)スクリーニング:さまざまな物質の中から効果のあるものを選び出すこと

▲UP



質問6    <1>今後の治療法についてアドバイスをお願いします   
<2>
ラパロは卵管采癒着に有効でしょうか?
     
<3>ラパロ後に卵子の質低下の可能性は大きいでしょうか?
      <4>IVFで生まれた子供のリスクについて教えてください

卵管采癒着、黄体機能不全、軽いPCOと診断されています。生まれてくる子どもへの健康リスクを考えると、どの治療法をとったらよいか迷います。アドバイスをお願いします。
<1>
卵管造影写真を他のお医者さまに見せたら、「癒着していないのでは」と言われました。医師の見解が分かれる場合、どう決断すればよいのでしょうか?自宅静養によって生理周期が30日以内になり、高温期も少しずつできてきました。癒着してないなら自然妊娠にかけたいです。
<2>
ラパロは卵管采癒着に有効でしょうか?
<3>
ラパロでレーザー照射により卵巣に傷がついたりさらに癒着することもあると聞きました。ラパロ後に卵子の質低下の可能性は大きいでしょうか?
<4>
IVFで生まれた子どもの追跡調査が現在されておらず、子どもの将来のリスクが不透明であると感じています。将来的なリスクについて、どのような見解がありますか?実際になんらかの疾患の事例はあるのでしょうか?


 Mさん 32歳

 ご主人の年齢:37歳
 生理周期:32日
 不妊原因:排卵障害
  卵管障害 黄体機能不全 
 妊娠経験:なし
 妊娠の結果:
  


<治療歴>
H14.12〜H16.10 クロミッドによるタイミング法を数回。
H16.10 卵管造影で、卵管采癒着の可能性を指摘される。ラパロで卵管采形成を行なうか、IVFしか方法がないかも、と診断される。

<現在の治療>
H17.2 自分の体の負担が少ないと思われるIVFで治療しようと、専門病院へ転院。排卵後だったため高温期を整えるべくプラノバールを処方されるが、副作用がひどく1錠で休止。その後通院していない。

<治療使用薬>

   回答  見尾Dr.

まずは、一般的事項からご確認いただきたいと思います。卵管が生まれつき問題を生じていることは決してありません。全て後天的問題です。今現在、卵管機能が低下する最大の原因はクラミジア感染です。抗体検査は行なわれていますでしょうか?この感染の有無がその後の対応を決める際に大変重要です。この点を踏まえて、「感染あり」なら、まず、ご夫婦で抗生剤を一定期間服用され、クラミジア菌のない状態にすることが必要です。そのうえで、自然妊娠をお望みであれば、感染やその他の理由があるないにかかわらず、女性のおなかの中の状態、つまり、卵管周囲癒着、卵管采の状況(大きさ・形・位置・癒着の有無など)卵巣の状態などを腹腔鏡にて確認することは極めて有意義です。クラミジア感染がありなら、その必要性はさらに増します。おなかの中は唯一、腹腔鏡検査でないと分かりません。癒着剥離などの簡単な処置もその際に同時にできます。ただ、この腹腔鏡検査・手術は医師の能力で効果や安全性に大きな差が出ます。信頼できる医師をお選びになることが重要でしょう。もし仮に、ご夫婦は、妊娠できることが、赤ちゃんを授かることが、何より最重要で、そこに至る方法にはこだわりがないとお考えなら、体外受精で高い妊娠率を期待されることも間違った選択ではないと思います。要はご夫婦がお子さんの夢をどのように、どの医療者と一緒に、叶えようとされるのか、ご夫婦のご意向が何より重要です。
<1>
前述しましたが、ご夫婦が何をお望みか、どうしたいかをご夫婦でお決めいただくことでしょう。何がどうなっているかは、検査を行なわないと分かりません。必要な検査をよろしければ進めていただき、その結果を踏まえてどうするかをお考えになり、担当医とご相談されることが最善ではないでしょうか?
<2>
いかなる手術によっても、100%元通りに治すことは基本的には不可能です。卵管采のダメージの程度やダメージの種類によって、効果は異なりますが、何とか最善を尽くして妊娠の確率を上げられるよう、努力するのが我々の役割と考えます。担当医と十分ご相談ください。
<3>
手術の際には電気メスやレーザーメスを用います。熱によるダメージや癒着剥離後の再癒着は当然予測されます。それも含めて外科的処置にはメリットとデメリットがあります。何を最も快しとご夫婦がお考えになるかではないでしょうか?!
<4>
長期追跡調査は世界的に行なわれています。基本的に一定の安全性を確認できているからこそ、世界中で広く行なわれていると認識しています。しかし、個々の事例からは、望まない結果が生じることはあり得ます。それは、いかなる状況でも起こりえます。決して100%絶対といえる事柄はこの世には存在しません。あくまでも、ご夫婦のお子さまに対するご希望、夢が大きく、体外受精を行なってでも、その夢を叶えたいとお考えになられる時のみに、我々は誠心誠意頑張って、ご夫婦のためにやらせていただいているに過ぎません。また、ご夫婦が満足できる結果のみをお考えでは、夢を叶える取り組みはできないと思います。何かを期待して取り組みをされるとしたら、なにがしかのリスクは常に受け止めていただくことが必要と思います。満足していただけることが何よりで、そうなる努力は惜しみませんが確約することはできません。
ご理解いただきたいと思いますし、ご参考になさってください。また、何かありましたらいつでもよろしければご相談ください。

  回答  蔵本Dr.

<1>
もし片方だけの癒着でしたら、卵管が通っている方の卵巣での排卵するときに妊娠は可能です。
方法としては、もう一回別の不妊専門施設で子宮卵管造影を行ない卵管采癒着の有無を調べるという方法があります。片方の卵管に通りが問題なければ、そちら側の卵巣で排卵する周期にタイミング法または人工授精が可能です。
卵管采癒着があるのか確実に調べるには、やはり腹腔鏡検査(ラパロスコープ)が必要となります。軽い癒着でしたら、腹腔鏡下で癒着を剥がすことができます。
<2>
ラパロスコープによる癒着剥離術は、癒着が軽度な場合には有効と思いますが、重度な癒着では困難と思います。両側卵管采の重度な癒着の場合はIVF-ETが最も良い治療と思います。
<3>
手術で卵巣の一部を切除したり、卵巣の手術で卵巣から出血がある場合、電気凝固やレーザー照射により止血することがあります。その場合、レーザーで焼いた部分の近くにある卵胞が死滅し、結果としてそちら側の卵子数が減ることがありますが質の低下はないと思います。
<4>
今までのところIVFで生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもに特に差は見られておりませんが、今後、日本産科婦人科学会が大規模な追跡調査をする予定と聞いています。

▲UP


質問7    <1>卵子が悪いので難しいと言われています、対処法を教えてください   
      <2>FSHの数値と早期閉経について教えてください
     
<3>ホルモン値と良好卵は関係ありますか?
      <4>クロミッドでは卵胞の育ちが悪いみたいなのですが・・・
 

<1>卵巣機能は正常で、卵子だけ悪いものばかりで難しいと言われています。このような症例は存在するのでしょうか?対処法はありますか?
<2>FSHが生理周期2日目で10.8でした。早期閉経ですか?
<3>2回目IVFで、「生理周期3日目 E2値66」「採卵2日前 E2値782 LH値14.2」でした。採卵数は2です。ホルモン値が全般的に高めかな?と思っているのですが、良好卵が採れない原因はここにあるのでしょうか?
<4>初めてクロミッドを飲んだ時に、卵胞の育ちの遅さを指摘されました。失敗の原因は誘発方法にもあるのでしょうか? 


 Kさん 31歳

 ご主人の年齢:31歳
 生理周期:28日
 不妊原因:子宮内膜症
  男性不妊  
  悪い卵子しかない(?)
 妊娠経験:なし 
 
 

<治療歴>
(避妊を解除して)1年
タイミング指導:3回→AIH:1回→自己タイミング6回→クロミフェン周期IVF 採卵のみ移植できず1回目→カウフマン1ヶ月→クロミフェン周期IVF 2回目現在の治療内容 = クロミフェン周期IVF タイミング

<現在の治療>
クロミフェン周期IVF タイミング

<治療使用薬>
クロミッド、ヒュメゴン150(IVF時のみ)


   回答  京野Dr.

<1>
今までクロミフェンをお使いのようですが、少なくても体外受精の周期にアゴニスト(点鼻薬)やアンタゴニスト(皮下注射)はお使いになったことはないのでしょうか?卵巣機能が正常であれば、どちらかの薬剤を投与することをおすすめします。
<2>
月経2日目のFSHの値は検査法によっても若干異なります。その施設の検査では10未満あるいは15未満を正常値とするのかを確認してください。10未満を正常値とするのであれば10.8はやや高く、卵巣機能がやや低下していると考えられます。
<3>
月経3日目でFSH(hMG)注射開始の時は、E2値が50pg/ml未満が望ましいと思います。そのために前周期にピルを内服したり、アゴニストを投与します。採卵2日前のLHの値が高いようです。やはりアゴニスト(点鼻薬)やアンタゴニスト(皮下注射)を使ってhCG投与前まで、LHの上昇を抑制した方が良いと思います。
<4>
クロミッドにこだわらず、他の卵巣刺激法を考慮してみてください。


▲UP

会員TOP
TOP