質問3 <1>移植当日のE2・P4の適正数値は?
<2>融解時戻りが悪いのですが卵の質の問題でしょうか?
<3>精子の数が少ないことも融解に耐えられない理由でしょうか?
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凍結胚盤胞移植を繰り返しています。凍結時は、充分な大きさで凍結できるそうですが、融解すると戻りが悪いそうで移植できるも、血液検査による判定日には、hCGゼロ判定が多いです。
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移植当日の、E2やP4の適正数値は、どのぐらいが平均なのでしょうか? <2>
また、融解すると戻りが悪いということは、卵の質の問題なのでしょうか? <3>
もともと男性不妊なのですが(脳腫瘍摘出いらい、嗅覚神経なし)、数年前は微量ながらも数値が測れていましたが、最近は、測定不可能なぐらいの量しか採れないし、1匹〜10匹程度しかいないようで不安です。こういうことも、融解に耐えられない理由になるのでしょうか?
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Mさん 36歳
ご主人の年齢:36歳
生理周期:無月経 (ピルを飲まないと生理が 来ない)
不妊原因:排卵障害、 多嚢胞、抗精子抗体、 男性不妊
妊娠経験:あり
妊娠の結果: 化学的流産2回、死産1回
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<治療歴> 結婚10年、治療歴8年(ICSIを始めて5年)不妊治療のきっかけは、生理が全く来なくなり婦人科を受診したところ、無排卵・PCOSがわかり、タイミング指導開始。男性不妊も判明し、ICSIでしか授からないと宣言されました。
<現在の治療> 自然周期ICSI。 採卵4回(1回に30個以上採れてしまい、その後はその凍結ET&BT(※)×5回。フレッシュETを1回。一度、空の卵胞。その後凍結BT×2回)
<治療使用薬>
クロミッド、デュファストン、プレマリン、プレドニン、hMG、プラノバール
(※) 胚盤胞移植(ブラストシストET)
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回答 高橋Dr. |
<1> 一般にE2値は200pg/ml以上が排卵期の値ですが、ホルモンに対する感受性が人によって違いますので数値はあまり重要ではなく、子宮内膜の厚さが10mm以上に達していれば胚移植に適していると考えます。P4は
10ng/ml以上であれば十分と考えます。 <2> 融解が悪いのは胚盤胞の質が悪いか、凍結融解技術が悪いかのいずれかが考えられます。胚盤胞の凍結法は比較的新しい技術ですので、施設による成績の差は大きいのが現状です。HARTクリニックにおける凍結胚盤胞融解後生存率は85%、妊娠率は58%(2004年度、400周期) <3> 一般に精子の遺伝子に異常があれば、ICSIで授精させても8分割くらいで発育が停止し、胚盤胞まで発達しません。胚盤胞まで発達しているのなら精子は問題ないと考えて良いと思われます。
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回答 吉田Dr. |
まず男性不妊症の専門外来を受診される必要があると思います。もともと男性不妊ということですが脳腫瘍を摘出後、急激に精液の所見が悪くなってはいませんか。もしそうだとしたら、下垂体から分泌しているFSH(精子を作りなさいと指令を出しているホルモン)とLH(男性ホルモンを作りなさいと指令を出しているホルモン)が低下している可能性があります。FSHとLHが低下しているときは、hMGを週に3回、hCGを週に1回使用すると精子数が上昇する可能性があります。 次に、奥さまはPCOSですので、糖尿病の治療薬であるグリコラン(メトフォルミン)を使用しながら卵巣刺激を行なうと卵の質が向上し、妊娠率が上昇、流産率が低下する可能性があります。もし、私が主治医であれば前周期にピルを使用して、スプレキュアではなくアンタゴニスト(セトロタイド)とhMGを使用した卵巣刺激を行なうと思います。つまり精子と卵の質を向上させてARTを行なうことが重要なのです。
<1> 新鮮胚移植の時はE2やP4値をコントロールすることはできません。以前は新鮮胚移植の時は採卵日からプロゲステロンの補充をしていましたが、いろいろなデータ分析から木場公園クリニックでは採卵後2日後からプロゲステロンを補充しています。 <2> 卵の質が問題ということもありますし、凍結・融解のやり方(テクニック)が悪いということもあります。 <3> 融解に耐えられない理由の一つなるとは思いますが、それが主原因ではないと思います。
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