Fine PAS(患者会サポート)活動レポート
Fine会報誌 2007年春号(vol.11) より


一緒にがんばれる仲間、見ぃ〜つけた!
今日ちゃん

突然ですがみなさん、同じ病院に通っている治療仲間っていますか?
いる方は、とってもラッキー♪ いない方、ほしいと思ったことありません?
私は病院に通っていたとき、ずっと思っていました。同じ立場のお友だちがほしいなぁって。最初は公立の総合病院に通っていたから、そこにいるのは妊婦さんばっかり。次の病院でもそうでした。もちろんそこではお友だちを作りたいとは思いませんでした。けれども次の大学病院では、ちょっと思っていました。その病院では、朝の15分間ほど不妊治療をしている人だけの注射の時間帯というのがあり、そのときに中待合にいるのは、段階は違っても、おそらく同じ不妊治療をしている人たちばかり…のはず。
なのに、なんか、こう、なんていうのかなぁ。とても気楽に話しかけられるような雰囲気がなくて、私は誰にも話しかけることができませんでした。そこは産科と婦人科が一緒になっていて、普段待合室にいるのは妊婦さんがほとんどだから、子どもを望んで治療をしている私たちみたいな立場の人は、心がちょっととんがっていたのかもしれません。ともかく、そこでも、お友だちができることはありませんでした。

そして、今度は不妊治療専門クリニックに転院。そここそまさに、みんなが必ず同じ目的を持ち、同じような治療を行なっている、まちがいなく「仲間」だらけのはず。ここではきっと、待合室などでお友だちができるに違いない・・!
と、期待に胸を膨らませて通った私。
が、が、しかし! やっぱりここでも友だちづくりの壁は厚かったのでした。待合室はたくさんの人がいるというのに、うっす〜らとしかかかっていないBGMの旋律が、そりゃもうハッキリと聞きとれるほどの‘静寂さ’。ううむ。なんなのでしょう。この雰囲気。そこはかとない緊張感。なんか、ちょびっとそのぅ、イキグルシイんですよね。

もちろん、治療が目的でここに来ているのだから、ひたすら治療に没頭すればいいのかもしれません。が、でも、誰にも話せない悩みだからこそ、同じ境遇でがんばっている誰かと話がしてみたかった。私はそう思っていたのですが、みんなはそんなこと思ってないのかな?(しょんぼり)ずっと話し相手(もしくは「友だち」)がほしいと願っていたけれど、結局そういう機会は得られないままでした。私ってけっこう人見知りなんですよね。

ところが、そんな私に、ある日念願の病院友だちができたのです! それはなんと、病院の待合室で知り合ったのではなく、インターネットの掲示板での出会い。書き込みを重ねるうちに偶然同じ病院に通っていることが判明し、次の通院の時に時間を合わせてランチをすることになったのです。初対面にもかかわらず、まぁ話が合うことといったら! そりゃそうですよね。だって同じ治療仲間であり、しかも同じ病院に通っているんだから、話題には事欠かないわけで。それはそれは楽しいランチになりました。そして、それをきっかけとして通院仲間の輪が広がり、いつの間にかみんな病院で待ち合わせして、ランチを一緒に取ることが多くなっていったのです。なんだか病院に行ってるんだかランチしに行ってるんだかわからない状態(笑)。
あれだけ苦痛だった通院が、私の中で楽しみに変わった出来事でした。あれは治療をがんばれた原動力として大きかったなー、なんて、しみじみ思い返したりして。

私たちはインターネットでそうやって通院仲間を見つけたわけですが、みんながみんな、その方法を取れるわけではありません。でも、仲間を欲している人はきっと少なくないはず。
そんな時、病院に「患者サークル」みたいなものがあったり、「患者を対象としたイベント」などがあったら、友だち作りのいいきっかけになりますよね。

最近は、不妊治療専門クリニックの増加とともに、患者の心をケアしようという施設がとても増えてきていると感じます。Fineでは、そのような施設からお声がけをいただいて、患者の集いのお手伝いをする機会も増えてきました。
たいていスタッフやピア・カウンセラーたちが施設に出向いて、その施設の患者さんたちに向けて体験談を語ったり、おしゃべり会の進行役を担ったりします。全国の仲間たちに会えることは、とてもうれしく、楽しいことです。
今回はそのようなイベントの中から、二つの施設をご紹介します


広島HART患者会に参加して
はるみさん
こんにちは。今日ちゃんからのバトンを受けて、Fineピア・カウンセラーのはるみ(石井)からは、広島HARTさんでの活動をご報告します。
この集いは、2006年11月に開催されました。私は、これまでいろいろな形での
わかち合いに、司会進行(ファシリテーターと呼ぶこともあります)として参加した経験がありました。しかし、今回は初めて訪ねるクリニックの中で行なうなど、それまでとは違う状況でしたので、正直なところ緊張感を感じながら役割を務めることになりました。

さて、この日の出来事をお話しする前に、私がこのようなわかち合いに興味を持ち、活動として参加したいと思った経緯を少し書かせてください。それは、先に今日ちゃんが書いてくださったことと、とてもよく似ています。私自身が治療をしていた頃はとても孤独でした。病院に行き黙って診察を受け、つらいことや痛いことやちょっとうれしいことも、みんな胸の中にしまったまま、会計をして帰宅することの繰り返しでした。あの頃、たったひと言でいいから、診察のあとで「あー今日は注射が痛かったわー」とか、「今日は〇ミリに育ってたからもうすぐ採卵みたい」とか、そういう呟きにも似たちいさなことがらを、夫以外の誰かと話してみたかったのだなあ・・・と、今になって思っています。もしも、そうできていたら、私の治療に対する向き合い方や、病院へのイメージも少し違ったものになっていたかもしれない・・・とも思いました。
こうした想いが強くあるので、私はFine Bloomやおしゃべり会などで、話し合いの進行役を担い「話す」場作りの活動に参加しているともいえます・・・。

さあ、広島でのお話に戻しましょう。
クリニックにおける交流会ということで、私はもちろん参加の皆さんはそれぞれ違う治療状況ということもあり、少し緊張されていたかもしれません。もちろんはじめに書いたように、私も少し緊張していました。しかし、いざ話し合いが始まってみると、皆さん堰を切ったようにお話しされるのがとても印象的でした。話された具体的内容は、守秘義務がありますのでここに書けませんが身近な日常の話題から治療に関することまで、途切れることなく多岐にわたりました。


今回の開催にあたり、事前に看護師長さんたちとご相談し、患者のみで個室にて話し合いを行なう形とさせていただきました。
治療や医療的な質問が出た場合には、担当の看護師さんへと連携するというお約束をしていました(実際に質問がありましたので、終了後に直接担当の方と話していただきました)。
2時間という設定時間はあっという間に過ぎました。帰り際の皆さんの気持ちのほぐれたような表情が印象的でした。

わかち合いの環境として、音楽・お茶・お菓子なども大切な要素だと私はいつも思っています。(今回は秋の小雨まじりの日でしたので特に!)暖かいお部屋、温かい飲み物など、看護師の皆さんのご配慮が、参加者さんの心を和ませてくれていたことだろうと思いました。それにまた、リラックスできるような音楽がたくさん用意されていました。
専門クリニックのこうした集いに初めて参加して、体験者同士が話し合うことの魅力について、私はもう一度考えてみました。
不妊の話題は、プライベートな部分があり、誰彼かまわず話せる話題ではありません。しかし、心身のつらさやこころに積もる気持ちは、声に出さないままでおいておくと、頭の中で堂々巡りになってしまうことがあります。
声に出せたとしても、それを聴いてくれる「相手」がいるかどうかは、また重要です。「相手」は、時にはすべてをくっきり映す鏡となってくれるかもしれないし、違う角度から光を当てて、それまでとは違う視点をくれるかもしれません。また、誰かの話を聞くことで、それまでまったく見えていなかったことに気づくこともあります。
つらさをふっとつぶやく声にだしたとき、「あーあれはつらいよねー」とか
「うん、うん、その通り」とか、誰か同じ体験をした人から言ってもらえたらそれだけで少し気持ちが軽くなるかもしれません。そして、そう言ってくれるのが、治療を受けている病院内の患者同士であれば、よりいっそう共感が深まるのかもしれません。

・・・・なんだか報告だけでなくなってしまいましたが(^^;)
とにかく、クリニック内で今回のような患者さんが自由に話せる場を設けてくださるのは、そこに通う患者さんたちにとってとてもありがたいことだと思います。もしも、こういう機会がありましたら、皆さんにはぜひ活用して楽しいひと時を過ごしていただきたいなあと思っています。
なお、今回の患者の集いのことは、広島HARTさんのサイトにも掲載されています。クリニックからのご紹介も見ていただくと、よりイメージがつかみやすいかもしれません。ぜひこちらもご覧くださいね。
http://www.hiroshima-hart.jp/newsletter/nl20_200612.pdf



患者さんの会だよ♪ みんな集まったよ!
ひらりんさん

2月24日、群馬県高崎市にあるセキールレディースクリニックにて、「患者様団体 第一回集会」 が開催されました! 私たちも応援団として、今日ちゃん、花子さん、めいさん、そして私の4人でお邪魔させていただきました。

午後1時ちょっと前。会場である、クリニックそばのイタリアン・レストランの一室に、参加される患者さんたちが集まってきました。この日は10数名の方が参加。やっぱり、同じクリニックに通う仲間だからかな? 見知らぬ人同士が集まると、普通、最初は緊張感からか、静かに周りの様子を伺うというか、他の人と打ち解けるには時間がちょっと必要って感じになるのだけれど、みんなコートを脱いで席に落ち着くと、何気なく、お隣さんと気軽におしゃべり♪
とってもよい雰囲気。
そんな中、ピア・カウンセラーのめいさんの体験談が始まりました。

めいさんは、およそ10年間不妊の時期があったそうです。治療の開始、ステップアップなどを進めるにあたり、旦那さまとの話しあいに時間を要したこと、仕事を続けながらの治療生活について、「仕事ばっかりしているから」などの言葉をかけられてとっても傷ついたこと。また、ドクターとのコミュニケーションについて、今思うと、当時は上手に聞きたいことが聞けなかった・・・などの体験談を穏やかに語りました。

みんなも私たちも「そう、わかる〜」と“共感”の気持ちを抱きながら、めいさんの話に聞き入っていました。話を聞きながら、私も我が身を振り返ってしまった(苦笑)。
“不妊”は一人の問題ではなく、夫婦二人の問題ですよね。気持ちはつい焦ってしまうけれど、二人で話しあいながら選択したり、決めたり・・・とっても大切なことですよね。
周囲の言葉にとっても傷ついた・・・これは私もあります(涙)。私はペットを飼っているのですが、そのことを知った年配の方から、「家の中で動物を飼っていると子どもができないって、昔からいうんだよ」って。後に、それは「迷信」らしいと聞きましたが・・・。相手に悪気がないので、それもまた困ってしまいます。
こんなに治療を頑張っているのに、私たち夫婦のことを何も知らないのに、そんなこと言われたくない!!! 我が家のネコは自分にとっては、とってもかわいくて、私の癒しの元=治療のストレスを吹き飛ばし、夫婦の仲もよい感じに取り持ってくれている存在なのに! そう、ひっそり心の中で憤慨しつつ、悔しくて悲しくて・・・そんなこと、ありませんか?

そして、めいさんに引き続き、Fineスタッフの花子さんの体験談がスタート。
花子さんは現在45歳。治療を続けています。
「“不妊治療を受けている”といっても人それぞれ、本当に状況は違います。年齢が同じでも身体の様子や治療結果も、周りの環境も。自分の状態を受けとめつつ、進んでいくしかありません」
地方に住んでいる花子さんは、地元で治療を続ける人たちとの交流の機会を持ったり、また、治療だけではなく、他にもいろいろなことを楽しみながら、気持ちにゆとりを持たせつつ、治療を続けているとのこと。最初から最後まで笑顔で話してくれました。

体験者=同じ“不妊”という体験を持つ仲間の話を、皆さんは今までに聞いたことがありますか? 意外とそういう機会って、本当にないんですよね。同じ体験者とひと言でいっても、その体験はさまざまで、一つとして同じものはなく、それぞれに、悲しくて、辛くて、不安で、迷ったり、ぶつかったり。そして、一人ぼっちのような気がしたり。そのまま、孤独な気持ちに潰されてしまいそうになって、どうしていいのかわからなくなったり(涙)。

でも、そんな気持ちを抱えているのは、ひとりじゃないんです!(力説)
ここにいる仲間み〜んな、それぞれに悩みを抱えながらも戦っているのです。

花子さんのように、仲間をみつけて、オフ会を開いたり、または参加してみると、そこで出会った仲間たちの間で、少し気持ちを開放することができて、
「自分だけじゃないんだ」、「一人ですっごい落ちこんでたけど、みんな、頑張ってるんだ」って気づいて、不思議とちょっぴり元気になれるんですよね。
じゃ、どこに行けば、仲間ってみつかるの???
一番身近な所で思いつくのは・・・そう! いつも行っているクリニック! そこには間違いなく、同じ目標を持つ、また、同じ悩みを持つ仲間がたくさん居るはず・・・。

そして、この日は体験談に引き続き、おしゃべり会が開かれました。
前半は4〜5人ごとのグループに分かれておしゃべり。今日ちゃん、めいさん花子さん、私も、それぞれのチームに入れてもらいました。おしゃべり会の時は、参加者の方とFineのメンバー4人だけ。不妊当事者のみのおしゃべり会です。とっても美味しそうなデザートセットを食べながら、どのグループもわきあいあい、楽しそうに話がはずみます。
とっても美味しそうなデザートセットを食べながら、どのグループもわきあいあい、楽しそうに話がはずみます。
「こんな時、みんな、どうしてる?」
「私はねぇ、こんなふうにしてるよ」「こんなのも、まぁ、よかったよ」
「あっ、そっかぁ。じゃ、私も今日から、それ、やってみる〜」とか、
「冷やさないようにしないとね〜」「そうそう!」
「カイロ、貼ってる?」「ねぇ、どこに貼ってる?」
「もちろん、貼ってるよ! 前と後ろに!」とか、
不妊治療の仲間同士、その辺は、あうんの呼吸です(笑)

とにかく、日頃なかなかできない情報交換や気楽なおしゃべり。話題は尽きません。状況が似ている仲間をみつけたり、年齢の近い仲間をみつけた人もいたようです。
そして、さすが! 同じクリニックに通う仲間同士。クリニックに対する熱い信頼感が、みんなの会話の合間にじんわり&ハッキリとにじみ出ていました!

おしゃべり会も後半は、もう少し大人数で、2グループでお話ししました。せっかくなので、いろんな人とおしゃべりできたほうがいいですよね♪

こうして、1時間半にわたるおしゃべり会は、笑顔と話題が尽きないまま、あっという間に閉会の時間を迎えることになりました。
みんなの表情も、帰る時には、さらに明るくなっていました!
また、私たちの帰り際には、参加者の方やクリニックのスタッフから、「帰り道、遠いですよね。お気をつけて・・・」と優しい声をかけていただいて、本当に私たちも心温まりました。

「患者さんたちの集い」って本当にすばらしい! これが私の感想です。
患者さんの想い・・・仲間と話したい、友だちになりたい。
クリニックのスタッフの想い・・・患者さんたちの環境や気持ちが少しでもよい状態になるようにサポートしたい。
私たち=ピア(仲間)の想い・・・少しでも仲間が楽でいられるようにサポートしたい。
みんなの真剣な想いすべてがつながって、前に進むと、結果として、こんなに素敵な場をつくることができる! みんながそれぞれに、とっても嬉しくて温かい気持ちになることができるなんて、感激です!! そして、その場に参加させていただけたことに本当に感謝の気持ちでいっぱいです! ありがとうございました!!

今回の体験は、「不妊も悪いことばかりではない」という私の気持ちをさらに強くしました。
こうして、全国の仲間・・・似たような立場で、それぞれに、さまざまにつらい体験をしながらも前向きに進んでいこうとしている、かけがえのない仲間に会えるなんてこと、不妊にならなかったら、こんなことは私の人生の中でなかったに違いない!

「Fine」って、言葉どおり、元気の源?(笑)
仲間同士が集まって、「不妊の仲間のためにできることは何かある?」というそれぞれの想いが一つになって、こんなふうに応援団になることができたのです。Fineの仲間の「輪(和)」が広がりました!
もし、あなたの通うクリニックで、このような会が開かれるなら、ぜひ、参加してみてください。仲間と会うと、なんかホッと和むんですよ。
私たちもまた、仲間に会いたい! いつでも応援に行きます♪ 声をかけてくださいね♪♪

今日ちゃん

いかがでしたか?
当日の参加者の皆さんの楽しい様子が伝わってくるようですよね。
通院仲間がほしいなぁと思っているあなた。ぜひ病院のスタッフさんに提案してみてください。きっとリクエストに答えようと努力してくれるはずです。
そして、もしもFineの仲間に会いたいなぁと思ってくださったら、ぜひそれも伝えてみてください。私たちはお声がかかれば、日本全国どこへでも、都合のつく限り、お邪魔したいと思っています。
だって、私たちの大切な仲間であるあなたに、私たちも会いたいのですから。
いつかその日が来るのを、楽しみに、待っていますね。