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2007年3月に第3回JISART施設認定審査が行なわれ、Fineからも患者審査委員として参加しました。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)は、品質管理システム(ISO9001)を導入することで、医療の質の向上を目指し、患者満足度を高めることを最大の目標としている団体で、現在21施設が加盟しています。
このJISART施設認定審査は今年で3年目となり、Fineは初年度より参加しています。
(URL:http://www.jisart.jp/index.shtml)
この審査での大切なポイントは「施設に通っている患者が満足しているか?」という点で、審査当日に「施設に通っている患者」に集まってもらい、審査の中の「患者グループインタビュー」という場で、「施設や施設スタッフに対して」意見を出してもらいます。そのために私たちFineが審査委員として、その「患者グループインタビュー」を開催運営し、そしてその意見を集約し審査に反映させます。
■準備
審査は各施設とも1日で行なわれましたが、その準備には前年の秋頃より取りかかっていました。まずたくさんの書類がこの審査には必要となっています。初年度より一から作り上げてきた書類を基に今年度版にするために、何度も認定審査メンバー同士がメールや添付
でやり取りをし、どの分が一番新しいのかわからなくなること多多でした。
書類を手直ししている間に、施設とFineの連絡担当者同士で、メールによるやり取りが始まりました。いよいよ審査が本格的となってきました。失礼のないように言葉使いなど細心の注意を払いながらやり取りをします。「施設に通っている患者」は、施設が募集したためにFineがその後押しをしました。募集のポスターやチラシ、応募を書き込むシートなどを送ったり、募集のためのコツを一緒に考えたりと。しかし、これがなかなか応募につながらず、審査の日ギリギリまでかかった施設もありました。やはり応募するにはかなりの勇気がいるのかもしれません。審査直前にはなんとか応募人数が揃い、審査会場などの準備も整っていきました。
■審査当日
朝早い新幹線で審査会場となる施設に出向きました。アシスタントを担当してくれるルルさんとともに、打ち合わせをしながら緊張ばかりしていました。今まで2年とも参加しているというのに、なかなか慣れるものではありません。施設近くのレストランで、審査委員全員で事前ミーティングをしながら昼食をとりました。審査委員は、医師、看護師、培養士、患者代表のFine、そして今回もオーストラリアから参加してくださったRTACの審査委員で構成されています。
予定時間ぴったりに施設に出向き、ご挨拶もそこそこに審査が始まりました。とうとう逃げも隠れもできない状態になってしまいました。初日ということもあって、全員がピリピリしたような緊張感が会場全体を包んでおり、思わず
「トイレに行っておいてよかった」と考えてしまったほどでした。まず、施設スタッフと審査委員との全体ミーティングが行なわれました。その間、「この審査で知りえた全てのことを口外しません」という「守秘義務」の署名をしながら審査の責任をヒシヒシと感じていました。
全体ミーティングの後、各委員に分かれて施設を実際に見て回る施設審査が行なわれ、私たちFineは、患者がいつも使っている場所を見せてもらい、患者の目で使い易いか、困るところはないかなどの審査を行ないました。施設スタッフの方の細やかな説明を聞きながら丹念に見せてもらっていると、時間は刻々と過ぎて行ったようで、次の「患者グループインタビュー」の時間となりました。
事前に応募してくださった患者の方たちが既に集合されていて、一緒に「患者グループインタビュー」の会場に向かいました。まずアシスタントのルルさんが、この審査やインタビューの説明や注意事項などを簡潔にお話ししてくれました。さすがに慣れたルルさん、落ち着いての説明です。私は1カ月くらい前に仲間同士で司会進行の練習させてもらったのに、実際は緊張しているのか、していないのかわからないままに時間は過ぎ去っていきました。参加した患者の方たちは、その私を手伝うかのようにたくさんの意見を次々と話してくださいました。
途中、他の審査委員たちがパラパラと「患者グループインタビュー」の会場に入ってきて、時々質問も投げかけてくださり、割とフレンドリーな雰囲気だったようです。また当然この会場には、施設のスタッフは一切入ってはいけないことになっているので、参加の患者の方たちも安心してお話ししてくださったのではないかと思います。つたない司会でしたが患者グループインタビューも無事終わり、その後は審査委員同士だけで審査結果を話し合いました。
最後に、施設スタッフも加わって全体ミーティングが行なわれ、審査の講評、結果報告などがなされ審査終了となりました。後は、改めてご挨拶をしたり、記念写真を撮ったりと一変して和やかな雰囲気に変わっていました。
■審査に参加して
この審査に参加して3年目となりますが、毎回とても緊張すると同時にとても充実感を感じています。それは、私の力でも成し遂げることができたという充実感もありますが、それより、この不妊治療という自分の受けた医療の世界で患者としてその医療の向上のために尽力できたという充実感がもっと大きいと思います。もちろん、その充実感を得るためには、相当の緊張感を味わう必要があるのですが。
この審査は、オーストラリアで長年行なわれている審査を参考にしていますがそれを日本でも本当に実施されたこと、それに加えて「患者」に目を向けて
「患者」の意見を取り入れようという姿勢が、この閉鎖的な日本において、とても画期的で素晴らしいと感動しています。この審査が日本に少しずつでも広がっていくと、もっと医療は患者のためのものになるのではないかと思うと、期待で胸が一杯になってしまいます。
実際、施設スタッフの方たちから「ここは患者さんのためにこうしました」と細やかな気遣いをうかがったり、「どのように患者さんに接したらいいか?」「どこを変えたら患者さんのためになるか?」などの質問を聞きたがっておられる姿勢を拝見することがたくさんあり、なんていつも患者のことを考えてくださっているのだろうと嬉しくなることもありました。
しかし、「施設に通っている患者」の応募がとても少ない、なかなか募集がうまくいかないということがとても気になりました。せっかく「患者」に目を向けた医療の向上が行なわれようとしているのに、肝心な「患者」の参加がないのでは、実際通っていない私たち患者代表委員が全てを審査することは困難となってしまいます。応募するには、「かなり抵抗がある」、「勇気が出ない」「私以外の人が参加すればいい」、「関わりたくない」などと考えておられる方も多いのかもしれません。
これを読んでくださった方、どうぞ「患者グループインタビュー参加募集!」というポスターやチラシを見たときは、ぜひ勇気を持って参加してみていただきたいと思います。
皆で力を合わせて、「患者」のための医療の向上を目指しませんか?
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