鹿児島県不妊相談窓口従事者研修会にて/平成17年8月5日(金)
Fine会報誌 2005年秋号(vol.5) より


ルルさん

東京から、飛行機に乗ってしまうと1時間40分で鹿児島へ。地図で見ると、とっても遠いのに、意外なほどあっという間に到着。でも、空を見上げると、そこは真っ青に澄んだ青空とキラキラした日差しがまぶしい、南国を感じさせてくれる街でした。そしてこの日は、なかなか全容を見ることができないという桜島も、その雄大な姿をくっきりと現わし、心なしか歓迎されているように思えました。

平成16年度から、国による特定不妊治療費助成事業がスタートしたのは、みなさんもすでにご存知のことと思います。鹿児島県でも、特定不妊治療費助成金の支給が行なわれています。そして、それに連動して各保健所には不妊相談窓口が設置され、鹿児島大学医学部・歯学部附属病院女性診療センターには、県からの委託で不妊専門相談センターが設置されています。

当事者からは、いろいろな悩みが寄せられるようになってきたといいます。(電話相談および医師による面談あり・予約制・無料)私たち当事者にとって治療費の助成が受けられることは、大きな喜びであり、進歩ですが、それ以外にも周囲に理解者が増え、支援してくれる人たちが増えるということは、とっても嬉しいことだと思います。しかし一方では、未だ不妊相談窓口の存在が、あまり当事者に知られていないのか、活発な利用がなされていないのも現状のようです。また現場では、当事者の気持ちを受け止め、それに応えたいと思いながらも、どのように対処するのが当事者のためになるのか、日々戸惑いやもどかしさを抱えながら仕事をしているということもあるようです。

そこで、「もっと不妊当事者の生の声を聞き、業務に活かしたい」という講演の依頼がFineに。鹿児島県では、不妊相談窓口業務に従事されている方は、主に保健師さん、助産師さんで、今回はそうした方々に当事者の生の声を届けることを目的に行って参りました。
40数名の方が県下から、県庁に集まってくださり、みなさんからは、とても真摯に当事者のことを考えてくださっているという熱意が伝わってきました。私もその思いに応えたいと思い、気がつけば、あっという間の2時間でした。内容は「不妊体験者(当事者)がのぞむサポートとは」というタイトルで私の不妊体験から始まり、Fineの活動に参加することになった経緯、Fineの活動のこと(今回は、各種アンケートとその結果に焦点をあてて)。また、JISART認定審査のことやFineピア・カウンセラー養成講座についても、いろいろな立場の方に知っていただきたいと思い、話に盛り込みました。

そして鹿児島に行くにあたり、急遽、スタッフやサポートメンバーの協力を得て、「不妊相談窓口へのぞむ当事者の声」というリサーチを行ない、その結果をお話ししました。これは、当事者と窓口従事者の方々との相互理解を図るためにも有効だと感じました。また、当り前のことですが、当事者はみな一人ひとり悩みも考え方も違うので、画一的な対応ではなく、個々人として尊重して受け止めてもらえるだけでも、気持ちが楽になり、救われる思いがするのではないかということを伝えました。今後は、広くFineの会員を対象に同様のアンケートを行なう予定です。当事者の自治体に対するニーズの把握と、それをフィードバックすることで、Fineが双方の橋渡し役になっていければ良いと思います。

最後に、いろいろな悩みを抱える当事者がのぞむサポートとは、どのようなことが考えられるのかをお話させていただきました。つまりFineが考えるサポートとは、当事者中心の医療であり、当事者に関わるさまざまな専門分野の人が、それぞれの立場でできるサポートをして欲しいということになります。たとえば、医師にしかできないサポートがあります。ピア(仲間)だからこそできるサポートも。そして自治体の人だからできるサポートもあると思います。私たちの心は、誰か一人が支えればいいというものではありません。わがままかもしれませんが、「○○○だからこそできる支え方」で、いろいろな人に各方面から少しずつサポートしてもらうことが理想だとFineは考えています。

これからも、さまざまな機会を利用して、当事者の声を届けていきたいとの思いを強くした鹿児島での体験でした。そして、自治体が当事者をサポートしようと考える時、何よりも現地に住むみなさんの声が、一番の原動力となると思います。ぜひみなさんも、身近な不妊相談窓口を活用してみてはいかがでしょうか。