|
こんにちは、Fineピア・カウンセラーの石井です。5月のさわやかな新緑の中、群馬県川原湯温泉で開催された、不妊当事者のための温泉合宿に参加してきました。そのご報告を書かせていただきます。この合宿の主催は、『日本で不妊治療を受けるということ』(岩波書店)の著者・まさのあつこさんと、聖路加看護大学教授の森明子先生です。お二人は、「カンカンネット」というネットワークを主催していらっしゃいます。お会いした際にうかがったところ、これは不妊にかかわる看護者とマスコミ関係者、それに大学院生などの研究者で作られたネットワークということでした。
ところで、東京・新宿から、群馬県草津温泉までは、直通バス【湯めぐり号】が出ています。私たちの目的地、川原湯温泉は地理的には、伊香保より奥のほうであり、草津より少し手前になります。新宿を出発するときは、全くの一人旅。集合場所に着くまで、どんな方たちとご一緒するのか、まったくわかりません。空は、肌寒い小雨模様。初めての場所で初めての人たちと一晩過ごすのに、こんなお天気で、なんとなく暗い気持ちをかかえておりました。しかし、4時間30分ほどのバスの旅(実は車に酔いやすい私は、このバスが一番心配でしたが)の後半で、高速を下りると、新緑の森や里山の風景がひろがり、徐々に気持ちが和らいでゆきました。
目的地のバス停に降り立ったのは、すべてこの合宿メンバーでした。このあたりから、いきなり和みモードに突入です。同じ体験を持つもの同士であると、こんなにもすぐに打ち解けるものなのだなあと、しみじみ思いました。やがて電車組も宿に到着し、予定のプログラムが始まりました。そう、この合宿は、単にお泊りすることが目的ではありません。研究者のお話しを聴いたり、自助グループからの出席者が自分たちの活動を報告したり、また、体験者としての参加者は、その体験について語るための集いでありました。私もFineからの発表者として、Fineのことや、Fineピア・カウンセラーのことなど、お話させていただきました。どんな人が参加したかとか、どんな話が出たかなど、詳しい内容については、募集の際に「取材目的の参加はご遠慮ください」とされていた、この企画の趣旨に反すると思われますので、読者の皆さんに申しわけないのですが、書くことができません(これ以降の文章も、私の印象記になってしまいますことをお許しください)
この合宿に参加された皆さんは、おそらく不妊の当事者として、「不妊」という問題についての意識の高い方たちだったのだろうなあと、後になって思っていました。交わされた質疑は、とても熱心で、予定時間をはるかに越えてしまいました。こういう時、泊りがけってありがたいなあと思います。帰宅の時間を気にせず、好きなだけ話し合うことができますから。
スケジュールが終了後、今度はお酒も入り、午前3時近くまで、話が弾みました。不妊のこと、今までの人生のこと、仕事のこと、嫁姑のこと・・・。繰り返しになりますが、ほとんどの人は初対面なのです。それなのに、話していてほっとする、誰かの言葉に「そうだよねー」とうなずく体験が、繰り返されます。私は普段、ピア・カウンセラーとしてFine Bloomでシェアリング(分かちあい)を進行していますので、「あ、これもある種のシェアリングだなあ」と、深く感じていました。それからあとは、真夜中こっそり入浴し、朝早く再び温泉に入り、食後も露天風呂に入るなどの温泉三昧を楽しみました。
翌日も企画していただいたプログラムに沿って、意見を交換しました。前夜よりさらにヒートアップした議論でした。最後に、新緑の中のハイキングを楽しみました。この日は、雨も上がり、散策には良い天候となりました。「マムシに注意」の看板にはドキリとしましたが、小鳥たちの声がとても近くで聞こえていました。清々しい気持ちで森の中を歩くことができました。
宿の皆さんは親切でしたし、お料理もおいしかったし、いつか夫と、ここに泊まりに来たいと思ったのです。でも、未来について悲しいお話を聴いてしまいました。この宿のある地区は、あと数年でダムの底に沈むのだそうです(宿は移築されるそうですが・・・)。散策しながら、この地の木々や植物や、動物たち、そしてもちろん、ここで生活している人たちに、近い将来試練が待っているのだと思いました。そう考えると、ちょっと切ない気持ちになりました。こんなにすてきな静かな集落なのに・・・。
このことも含め、今回は不妊当事者の合宿に来たけれど、テーマ以外にもたくさんお土産(想い)を持ち帰ることになったなあと感じています。
この合宿に参加して思ったこと・・・誰かと、とことん突き詰めて話す時間が、私にはまだまだ必要なのかもしれないということでした。そして、さらに、もちろん不妊のピア・カウンセリングというメインテーマでは、これから考えなければならない大きな宿題をもらってきました。それらに、どういう形で答えを出していけるのか、そして、それがピア・カウンセリングの活動にどう生かせるのか、まだまだわかりません。けれども、なんだか大きなエネルギー源となりそうな予感はあります。
今回出会った皆さんへ 「いい旅と出会いをありがとうございました」
|
|