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埼玉県巡回不妊相談に行ってきました。埼玉県が、社団法人埼玉県看護協会に委託して実施したもので、埼玉県を東西南北で大まかに4地区に分け、2回ずつ計8回、その場所に行って出前相談をするという事業でした。
ほぼ月に1回、土曜日の午後に開催されました。その中で体験談を話してもらいたいということで、Fineに依頼があり、参加することになりました。全8回中Fineピア・カウンセラーは6回関わり、いずれも2名ずつ参加しました。
内容は医師の講話、集い、個別相談の3つに分かれていました。医師の講話では、埼玉医科大学総合医療センターの医師から不妊症の原因・検査・治療法などについて50分ほど話がありました。その後に集いが30分ほどありました。集いというのはカウンセラーの方が進行役になり、私たちが体験談を話し、参加者からの質問に私たちと医師が答えるというものでした。個別相談は事前予約制で、医師とカウンセラーがそれぞれ相談に応じていました。
私が体験談を話すのは今回が2回目で、一般向けの話ということで、何を話すかかなり悩みました。自分が治療をしていたときに知りたかったことはなんだろう? 今だからこそ言いたいことはなんだろう?
最後にいきついたことは「仲間を作ろう」ということでした。私は良い仲間に恵まれて、楽しい治療生活を送れたと思っています。不妊治療を行なったことは後悔していませんし、治療を行なったからこそ、今の選択ができているのだと思います。
もうひとつ伝えたかったことは、養子を迎えたという体験を多くの方に知ってもらいたいということです。実子ができなければ養子をと、ちょっとでも思った方は多いと思いますが、私はそれを実践しました。治療をやめようと思ったときに、自分にとって子どもって何だろうと考えました。遺伝子を残したい?夫との子どもを見てみたい? 何か違う。子どもを育てることで、子どもからいろんなことを教えてもらい、違う自分が発見できるかもしれない。人間としてもっと成長していけるかもしれない。私は子どもを産みたいわけではなく、育てたいのだと気がつきました。それだったら、養子を迎えても良いと思ったのです。夫も快く了解してくれて、養子斡旋団体に登録しました。それから半年後、10カ月の男の子を迎えました。その2年後には、3カ月の女の子を迎えました。
私は養子を迎える、里親になる、ということは治療の一選択肢だと思っています。不妊治療には年齢の壁がありますが、養子を迎えるときも年齢の壁があるのです。不妊治療を限界まで頑張ってからでは、養子を迎えることも困難になってしまう場合が多くあります。
養子を迎えるということは特別なことと思われがちですが、子育ては養子でも実子でも同じです。自分が子どもを産みたいのか、それとも子どもを育てたいのか、早い段階で一度考えてみてもいいのではないでしょうか。不妊治療は子どもを産むことだけがゴールではなく、養子を迎える、二人だけの生活を選ぶということもゴールであるということを忘れてはいけないのかもしれません。
……というようなお話をしました。中には涙を流しながら聞いてくださる方もいて、治療をしていた当時を思い出して、こちらもこみ上げてくるものがありました。
各回の参加者は5名から40名くらいでした。参加者の背景は、これから不妊治療を始めようと思っている方、治療中断中の方、高度医療を行なっている方などさまざまでした。驚いたことはカップルで参加されている方が多くいたことです。中には1/3がカップルというところもありました。ご主人からの質問もあり、カップルでのわかち合いの場の必要性を感じました。
こうした状況を踏まえFineでは、4月29日(日)午後に、カップル限定でわかち合いの場を設ける予定です。
参加者の方からはこんなご意見をいただきました。
・ 体験談が参考になりました。前向きに考えられるようになりました。
・ お話を聞きながら、自分だけじゃないと、ほんの少し気持ちが楽になりました。
・ 治療で辛い経験をしている方が多くいることがわかりました。治療を受けたいけど受けら
れない人もいると思うので早く保険適用してほしいです。
・ 周りの人ともっと話したかった。体験者の話をもっと聞きたかった。
・ 客観的知識や情報だけでなく、治療を頑張っている方の肉声を聞けてよかったです。
今回このお話をいただいたとき、まだピア・カウンセラーとしてかなりの駆け出しで、どうなることかと心配でしたが、無事終了して参加者からも好意的なご意見が多く聞かれ、ホッとしました。自治体主催のこのような会は参加される方も、安心して参加できるでしょうし、地域での仲間作りの場の提供という側面もあるのではと思いました。来年度へつながる活動になればと思います。
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