「不妊治療の経済的負担に関するアンケート」結果(抜粋)

不妊症患者をはじめ不妊で悩む人をサポートする、不妊体験者によるセルフサポートグループ「NPO法人Fine(ファイン)」は、このたび「不妊治療の経済的負担に関するアンケート」を実施、不妊当事者に対するアンケートとしては過去最大規模の1,111人の生の声を集めました。
ご協力くださった皆さん、ありがとうございました。
設問の一部と回答、および解説をご紹介します。
*設問全文はこちらをご覧ください。 http://j-fine.jp/top/anke/keizai.html
*プレスリリースはこちらをご覧ください。http://j-fine.jp/prs/prs/fineprs-keizai.pdf

■回答者のプロフィールについて

Q28年齢・性別は?

「25歳未満」が8人(0.7%)、「25〜30歳未満」が128人(11.5%)、「30〜35歳未満」が429人(38.6%)、「35〜40歳未満」が363人(32.7%)、「40〜45歳未満」が158人(14.2%)、「45歳以上」が22人(2.0%)でした(無回答3人)。30代が71.3%とその大半を占めており、次いで多かったのが40〜45歳未満でした。
性別は女性が1,082人で97.4%。男性は26人で2.3%にとどまりました(無回答3人)。



Q31:治療期間は?

治療期間で一番多かったのは「2年〜5年未満」の496人(44.6%)、次いで「1年〜2年未満」の276人(24.8%)、3番目は「1年未満」の184人(16.6%)、4番目が「5年〜10年未満」で133人(12.0%)でした。

 


Q2現在の治療は?

現在の治療は下記の通りで「体外受精」228人(20.5%)と「顕微授精」234人(21.1%)の、合計41.6%の人が特定不妊治療費助成制度の助成対象になります。一方「検査中」14人(1.3%)、「タイミング療法」162人(14.6%)、「人工授精」169人(15.2%)の、合計31.1%の人は、通院はしていますが対象になりません。

 


■支払っている治療費について

Q3‐2:「体外受精」の1周期あたりの治療費は?

最も多かったのは「30万〜50万円未満」の269人(54.0%)、2番目が「20万〜30万円未満」の103人(20.7%)、3番目が「50万円以上」の79人(15.9%)でした。これが顕微授精になると、下記のように分布が変わってきます(Q3-3参照)。




Q3‐3:「顕微授精」の1周期あたりの治療費は?

一番多かったのは「30万〜50万円未満」と、体外受精と同じですが、人数および割合は216人(48.2%)と、体外受精と比べて減り、体外受精との大きな違いとしては、2番目が「50万円以上」の135人(30.1%)となり、経験者の3割が、1回の顕微授精に50万円以上の治療費を支払っています。
日本で顕微授精がどれぐらい実施されているかは、日本産科婦人科学会の「平成20年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告(日産婦誌61巻9号)」によると、治療周期総数161,164件に対して顕微授精の実施周期数は61,813件であり(2007年)、その頻度は低くないことがわかります。

  


Q6: 通院を開始してからの治療費の総額は?

「治療を開始してから、これまでに支払ったと思われる治療費の総額は?」の答えで一番多かったのは「10万〜50万円未満」の276人(24.8%)。2番目は「100万〜200万円未満」の257人(23.1%)で、1番目とほとんど差がありません。3番目が「50万〜100万円未満」で193人(17.4%)でした。この治療費総額には、Q31の「治療期間」や「行なっている治療」が大いに影響し、いうまでもなく高度治療を繰り返し受けると、費用はどんどんかさんでいきます。当事者はこのように、非常に多くの金額を不妊治療に費やしていることがわかりました。




Q8:経済的理由でステップアップを躊躇、延期したことは?

では、当事者は、それほど高額の治療を受けることに躊躇したこと、あるいは経済的理由で延期(断念)したことはないのでしょうか? この設問には下記の通り、「非常にある」「ややある」が合計933人で、84.0%もの人が「経済的理由で次の段階の治療へ進むことに迷いがある」との結果が出ました。
そして、「あまりない」「まったくない」と答えた人も、必ずしも経済的にゆとりがあるというわけではないようで、「他に治療の選択肢がなかったから」「年齢的に、もうギリギリだから」「顕微授精でないと妊娠できないから」など、「躊躇する余地がなかった」という声も多数見られました。

  


Q17:治療費の捻出方法は?

不妊治療の費用は高額であり、当事者は苦心してそれを捻出しています。今回の設問では複数選択にはしなかったのですが、実際には単独ではなくいくつかの方法を併用しているという場合が多いと思われます。貯金を切り崩してしまったため、借金をして治療を続けているというケースもみられました。

 


■治療費以外の経済的負担について


Q4-1 : 通院のための1周期あたりの交通費(平均金額)は?

不妊治療で目に見えにくい費用の中に、交通費や宿泊費などがあります。治療周期には連日の通院が必要になったり、近隣に施設がない場合や希望の治療を受けるために、遠距離通院や宿泊を伴う通院をする人もいます。それらにかかった費用はどれぐらいかを訊いてみました。1周期あたりの交通費の「平均金額」は、以下の通りです。

  


Q5-1:通院のための1周期あたりの交通費(最高金額)は?

1周期あたりにかかった交通費の「最高金額」は、以下の通りです。

 


Q5-2:通院のための1周期あたりの宿泊費は?

「宿泊費がかかった」と答えた人は1,111人中56名で、全体の5%の人が宿泊を伴う治療を受けたことがあることがわかりました。その内訳は、一番多かったのが「1万〜2万円未満」で15人、2番目が「5千円〜1万円未満」で14人、3番目が「2万〜3万円未満」で9人、最高金額は「60万円」で2人いました。



Q16:医療機関の治療費以外の1カ月あたりの代替医療等(複数回答)

少しでも妊娠の可能性を上げたいと願い、健康を維持するためや体質改善などを目的として、不妊当事者はさまざまな代替医療等も取り入れています。「漢方」を服用した経験がある人は「保険適用のもの」で285人、「保険適用不可のもの」は242人でした。その平均使用金額は1カ月あたり「保険適用のもの」は4,989円、「適用不可のもの」は21,549円でした。「サプリメント・健康食品」は623人(56.1%)で平均使用金額は7,702円。「鍼灸」は208人(18.7%)で平均使用金額は18,207円でした。
 


■現行の「特定不妊治療費助成事業」について


Q18&19:この助成制度を知っている? 助成金を申請したことがある?

まずQ18の助成制度の認知度については、「よく知っている」が391人(35.2%)、「知っている」が495人(44.6%)と、合わせると79.8%の人が「知っている」と答え、その認知度が高いことがわかります。
Q19の「申請したことがある?」という質問をしたところ、「はい」が448人(40.3%)、「いいえ」が642人(57.8%)と、約6割が申請したことがないという結果が出ました。


 

Q20:助成金制度を利用しない理由は?(複数選択)

「申請したことがない」と答えた6割の人に、その理由を尋ねたところ、このような結果が出ました。




Q23:現行の最大給付総額の「150万円まで」を「いつどのように使っても自由」にしてほしい?

現在の助成金は、「1回につき15万円までを年に2回まで、5年間まで」が、受け取れる最高金額です(15万円×2回×5年間=150万円)。これを「1回の金額の上限」や「1年度に2回まで」などの金額や回数制限を撤廃し、自由に使わせてほしいかという設問に対して、「賛成」は816人(73.4%)、「反対」は68人(6.1%)、「どちらでもない」が225人(20.3%)でした(無回答2人)。「賛成」のコメントで多かったのは「個々の状況に合わせて治療計画が立てられる」であり、「反対」のコメントでは「ある程度の線引きがあったほうがよい」「治療にのめり込んでしまいそうで怖い」などがありました。
 


Q24:「所得制限730万円」を撤廃してほしい?

助成金の支給の条件として、夫婦合算の年間所得が730万円という制限があります。「これを撤廃してほしい?」という質問に対しては、「賛成」655人(59.0%)、「反対」131人(11.8%)、「どちらでもない」323人(29.1%)でした。「賛成」のコメントの中には「子ども手当てに制限を設けないのであれば、ここの制限も設けないでほしい」という意見や「20万円オーバーで給付が受けられなかった。もうこれ以上治療費が続かない」「私も働かなければ治療費が出せないが、所得の制限があるのでパートの給料を調整している。助成金はもらえなくてもいい、というほどパートで稼ぐのはムリ」などの切実な声も目立ちました。「どちらでもない」のコメントには、「制限は必要だと思うが、730万円という額は引き上げてほしい」など、撤廃ではなく緩和を望む声が多くみられました。
 


■アンケートの「コメント」より
■「経済的負担」に関するフリーコメント欄の中で多く見られたものは、おおむね下記のよ
  うな内容でした。

 ○少子化対策として子育て支援は大切だと思うが、不妊のカップルも支援してほしい。
 ○仕事をしないと治療費が捻出できないが、治療をしていると仕事の継続が困難(or退職した)。
 ○収入が減って、治療の継続がむずかしくなった(or体外受精に進みたくてもできない)。
 ○治療も仕事も継続できるよう、社会的に不妊治療に対する理解を深めてほしい。

■具体的なコメントをいくつか紹介します。

今は貯金を切り崩して治療費に充てているが、貯金が底をついたらもう不妊治療は諦めるほかない。
子どもを授かるためであればギリギリまで努力しようという姿勢で治療をしてきた。
共働きで治療費捻出を試みたが、治療費が家計を圧迫し、2年間治療を断念せざるをえなかった。
すぐにでも体外受精をしたいが、お金がなくてできない。こうしているうちにどんどん年齢を重ねてしまうと思うと、毎月涙が出る。
自己資金がつきてしまったため、家族からの援助のおかげで治療を続けていられる。
次の治療を予定していたが、お金の都合がつかず、病院に延期してもらった。悲しいです…。
費用が高すぎて、ダメだったときには落ち込みがさらにひどくなる。
不妊治療は精神的負担と経済的負担が大きすぎる。せめて経済的負担だけでも何とかしてほしい。
毎日の注射代が高額で本当につらい。しかも治療をしているとフルタイムでは働けない。
すでに存在している子どもにではなく、もしかしたら永遠に存在することがないかもしれない我が子に何百万円も費やすのは精神的に厳しい。
通院するために勤務時間を減らした結果、収入が減り治療自体ができなくなるジレンマが生じる。病欠扱いになればいいと思う。
とにかく借金だらけになり、医療費だけで、家計が火の車です。
治療を始めて1年で、100万円ほどはかかっています。結果が出れば救われますが、来年も同じ様には続けられません。こんなにかかるとは思いませんでした。
子どもを授かるかもしれないのに、治療のお金がないのが理由であきらめるのは、とても切ないです。
夫の収入が激減し治療ができなくなった。私も仕事を始めたいが、雇ってくれるところが見つからない。
本当に、本当に、苦しい・・・。


Fineでは、この調査結果をプレスリリースとして記者発表したところ(2010年3月)、新聞やテレビ等、複数のメディアに取り上げられました。
今後は、国会請願や陳情書など国政への働きかけに活用していきます。また、講演会や学会発表などで、広く社会への周知を図っていく予定です。
今後も、ぜひご協力をお願いいたします。