「里親や養子縁組の制度を詳しく知る機会が少なかったので、実際に活動されている方のお話をうかがえてとても有意義でした」
(参加者の感想)
里親と養親の経験者であり、長年当事者支援もされているお二人を講師としてお招きし、子どもを迎え入れたきっかけや子育ての具体的なエピソード、支援現場の実情などをお聞きしました。
開催日:2025年4月12日(土)10時00分-12時00分
開催場所:Zoomによるオンライン開催
参加費:無料
第一弾の上映会に続き、今回の講演会もZoomによるオンラインで行ない、不妊・不育の当事者や講演内容に関心のある42名の参加がありました。うち、ご夫婦と思われるお二人でのご参加は5組でした。
まずは、一般社団法人グローハッピー代表理事の齋藤 直巨(さいとう なおみ)さんのお話を聞きました。
齋藤さんは実子2人と里子1人の母親です。2回流産された経験から里親になることを考えるようになったそうです。2カ月間の短期で預かった子どもとお別れする時に「泣かないで。私も泣かないから」と言われ、2歳でありながらすべてをわかっているようで、その別れがとても悲しかったことなどをお話しくださいました。
そして、3歳から大学生となった現在まで一緒に暮らしている里子の女の子が、嫌いな納豆を好きだと言って食べ続けていたことや、家出をしたことなど、具体的な子育てのエピソードを教えてくださいました。
また、里親仲間が起こした里子傷害致死事件に衝撃を受け、起こしたのは自分だったかもしれない、と感じたことがきっかけで、里親への支援の必要性を痛感し、里親のサロンや子育てのためのワークショップ開催などの活動を続けているとのことです。その他、施設で暮らす子どもたちの現状や里親制度の歴史などについての解説もありました。
「里親とはその子の苦しみを背負うのだ」との言葉がとても印象に残りました。
続いて、一般社団法人アクロスジャパン代表理事の小川 多鶴(おがわ たづる)さんのお話を聞きました。
小川さんは、アメリカのカリフォルニアで受けた不妊治療の最初の説明で、養子縁組や里親も選択肢の一つとして提示されたご経験や、その後、特別養子縁組で男の子を迎えたこと、また、アメリカと日本の制度の違いや、社会における養子縁組や里親についての認知の差に驚き、ご自分でアクロスジャパンを設立され、妊婦相談や養子縁組あっせん支援をしていることをお話ししてくださいました。そして、特別養子縁組の制度の解説に続き、相談にくる妊婦に対し、医療や行政、法律の専門家などさまざまな機関と連携を取りながら支援をしていることや、最近養子縁組を望む夫婦の中には、早く安く赤ちゃんを受け入れたいと話す人も多いことなど、現場の実情を詳しく教えてくださいました。支援を受ける妊婦のほとんどは、妊婦検診を受けていないとのことで、多角的な支援が求められている状況が伝わってきました。
講演の後の質疑応答では、参加者からの質問にお二人が丁寧に答えてくださいました。「養子縁組した後、実の親との交流はありますか?」との質問には、実の親との交流をすることは、子どもや親にとってどのような影響を及ぼすかわからないため、小川さんの団体では基本的にはしていないとのことです。「子どもの出自を知りたいのとの希望にどう対応したらよいのか?」との質問には、心が不安定な思春期に子どもが悩むことがないように、幼いころからルーツなどを伝えていくことが大切であり、里親として準備が必要であることなどを教えてくださいました。
その後、参加者同士のおしゃべり会を20分間行ないました。希望者のみ10名が残り、4つのグループに分かれて、講演の感想やそれぞれの経験を伝え合いました。
最後に講師のお二人との懇親会があり、参加者が講演を聞いた感想をお二人に直接お話しし、講師同士もお話をするなどして交流を深めました。
小川さんの「私は養親だからといっても、ちっとも偉くないし駄目な親なんですよ」
齋藤さんの「あなたを待っている子どもが必ずいますよ」の言葉がとても印象に残りました。
この講演会は「多様な絆のかたちプロジェクト」の第二弾として行なわれました。産む以外の選択肢について理解を進めるというプロジェクトの目的通り、養子縁組と里親制度の両方について、より具体的に知る機会になったと感じています。
養子縁組と里親制度は違う面も多くありますが、共通点も多いことを知ることができました。参加した方々が、ご自分の未来を照らす、何らかの気づきを得る機会となったことを願っています。
(担当:Fine多様な絆のかたちプロジェクトメンバー 大久、大塚、野曽原、金澤)