不妊や子どもを持たない生き方への偏見をなくすためにFineの活動が大きな意味を持っていると思います。
これからどんなふうに進化していくのか、
今後の活動を期待しながら、応援していきたいです。
(仙波由加里さん 桜美林大学 加齢・発達研究所 客員研究員)
(スタンフォード大学Freeman-Spogli Institute for International Studies, the Inter-University Center for Japanese Lauguage Studies, Visiting Scholar 人間科学博士)
- Fineを知ったきっかけは?
- 今は治療をやめてしまいましたが、自分も不妊に悩んで別の不妊の自助グループに所属していました。Fineというグループが設立されて、新聞などでも紹介された当時、新しくできた自助グループということで、とても興味がありました。
- Fineの印象は?
- 何よりも、自分が所属していた自助グループよりも活動している人も、雰囲気も若い! というイメージが強かったです。代表の松本さんも、イベントなどで何度かお見かけして、とっても気さくな方で、その松本さんが進行するイベントは、なにかとても人をひきつける力があるように思いました。
最初、ちょっとだけ気になったのは「Fineさんをサポートする医療者や専門家が、グループの活動に影響していそう」と感じたことです。後で思いすごしだったとわかりましたが「不妊の人たちが、不妊関連の医療の政治的な道具に使われないといいけれど…」となんとなく抵抗がありました。
- Fineのこれまでの活動で印象に残っていることは?
- 2009年の「Fine祭り」です。すごくたくさんの人が参加していて、Fineさんは、世の中に求められているグループなのだなぁとつくづく感じました。多くの不妊の当事者が集まる機会はそんなに多くないので、こうしたイベントを開催することは、とても意義があると思います。またピア・カウンセラーの養成講座も特徴的だと思います。
- Fineを知って、「不妊」や「不妊当事者」のイメージは変わりましたか?
- メンバーの方や、とくに代表の松本さんをみると、「不妊でも生き生きと素敵な人はいるじゃない」と感じます。でも、まだ不妊への偏見が日本社会の中でなくなるには時間がかかるだろうと思います。もっと不妊でもいきいきと生きている人が、たくさん見られるようになったら、不妊のイメージもかわるかもしれませんね。
- Fineに今後、どんな活動や役割を期待しますか?
- 今のFineさんが行なっている活動は社会に大きな意味をもたらしていると思いますが、治療を考えている人や、治療中の人にばかり目をむけるのではないように、「みんなでがんばって子どもを持ちましょう」というようなグループにだけはならないように、気をつけていただきたいです。
カップルや特に女性が、子どもがいるとかいないとかで圧力を受けないような社会をめざして、今後も活動を続けてほしい。
治療で子どもを持った人や、また治療をしても子どもができなかった人のその後の人生についても、もっと社会に発信してもらえたらと思います。
- Fine、あるいは「不妊」に対して思っていることを自由に教えてください。
- 不妊を取り巻く環境がなかなか改善されないのは、もちろん社会の考え方が今なお保守的なせいもあるけれど、不妊である私たちが「不妊は恥ずかしいこと」だからと、口をとざしているせいもあると思います。治療で子どもができたり、子どもができなくても治療をはなれると、まるで何もなかったかのように不妊のこととはもうかかわりたくない、語りたくないという人もいます。でも本当は、そういう人こそ、もっと自分の感じたことや経験したことを社会に向けて発言していかないと、不妊をとりまく社会の環境は変わっていかないのではないかと思います。
自分をふりかえって、不妊になって悪いことばっかりではなかったと思っています。自分の人生の意味(生まれた意味)を真剣に考えたし、弱い人の立場も理解できるようになったと思うし。それに、不妊という問題を通して、いろいろな人とも出会うことができました。不妊も一つの個性とみられるような世の中になってほしいと、本当に心から思います。
私自身は、もう子どものいない人生に納得しているし、不妊は一応卒業したと思っているので、不妊の卒業生の目で、Fineさんがこれからどんなふうに進化していくのだろう・・・と、今後の活動を期待しながら、応援していきたいと思います。
本のご紹介
仙波さんは2010年10月に、翻訳本を出版されました。
『家族をつくる 提供精子を使った人工授精で子どもをもった人たち』
(人間と歴史社 税抜き2800円)
ニュージーランドのケン・ダニエルズ氏が、提供精子を利用した親御さんたちの声、そしてそのお子さんの声を集め、まとめた著書『Building a family with the assistance of donor insemination』を日本語に翻訳したものです。本書に登場する親御さんたちは、すべて実名で、不妊とわかったときの衝撃や、AIDを選択するまでの葛藤、そして妊娠中の心境や周囲の反応、また家族を持ったあとに経験したこと、感じたこと、実際に子どもに家族ができた歴史をどのように話したのかなど、当事者の語りがそのまま綴られています。卵子提供を考えたり受けたりしている方にも参考になるエピソードが満載です。不妊当事者の方はもちろん、不妊に関心を持った方にもおすすめです。下記のアマゾンのURLから購入できます。
『家族をつくる 提供精子を使った人工授精で子どもをもった人たち』(人間と歴史社)
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