患者対応のロールプレイ
不妊治療当事者の現状および体験談をお伝えした後、ロールプレイにて胚培養士の皆さまに患者役と胚培養士役の両方を体験していただきました。
開催日:2024年1月6日(土)
担当者の感想
第29回日本臨床エンブリオロジスト学会ワークショップ・学術大会では、「新たなスキルを手に入れる ~リカレント教育の重要性~」とのテーマのもと、二日間にわたり、さまざまな講演、セミナー、シンポジウム、ワークショップが開催され、多くのエンブリオロジスト(胚培養士)の皆さまがご参加されていました。
今回Fineは、大会長の猪鼻達仁先生よりお声がけいただき、座長の家田祥子先生とともに、「患者対応のロールプレイ」と題した講演およびワークショップを担当させていただきました。
Fineの講演では、はじめにファウンダー/理事の松本より、不妊当事者に関する現状についてデータやFineが実施したアンケート結果を交えてお伝えするとともに、不妊当事者が抱えやすい4つの負担についてご説明しました。ご参加の皆さまの中には、メモをとりながらお聞きくださる方も多くいらっしゃいました。
続いて、Fine公認 不妊ピア・カウンセラー2名より、体験談の発表をしました。当事者が抱える特有の孤独感、クリニックのスタッフや周囲からの気づかう声がけをありがたく思えることもあれば傷ついてしまうこともある現状、胚培養士の皆さまへ期待することなどをお話しさせていただきました。こちらも皆さまに真剣に聞いていただき、とてもありがたく感じました。
次は、ロールプレイです。4~5名ずつのグループに分かれ、Fineのスタッフも一緒に入って実施しました。胚培養士の皆さまには、患者役と胚培養士役の両方を体験いただいた後に、グループ内でフィードバックを行ないました。普段の職場では患者に接することが少ない方や、一度も患者と話したことがない方も中にはいらっしゃいましたが、実際にやってみると、「普段の仕事で実際にあった難しいケースを今回題材として扱って、どうしたらよかったのかを考えられた」「簡単なケース設定だと思ったが、実際に患者に伝えようとすると、言葉選びがとても難しかった」などの感想がでて、皆さまが真剣にロールプレイにチャレンジしてくださったことが伝わりました。その後、全体で感想をシェアし、「これからは日々の仕事の中で、背景にいらっしゃる患者さまのことにも思いを馳せながら仕事をしていきたい」「説明の途中でわからないことがないか確認する声がけがあるとよいという意見を実践でぜひ取り入れたい」などのコメントをいただきました。
最後に、座長の家田祥子先生より、「胚培養士として忘れてはならないのは、専門職として専門的な内容をわかりやすく患者さまにお伝えすることが重要であること。また、患者さまと相対しているという意識を持ち続けることが大切である」とのお話がありました。クリニックでは直接お会いする機会が少ない胚培養士の皆さまが、普段の業務も大変お忙しい中、ワークショップ・学術大会で学びを深められ、さらに当事者への寄り添い方についても学んでくださることに、当事者の一人として、ただただ感謝の気持ちでいっぱいになりました。
また、ロールプレイの合間に胚培養士の皆さまのお仕事のご様子をお伺いしたところ、心身ともにご負担の多いご職業のように感じましたが、休憩時間にも胚培養に関する情報交換をなさりメモをしていらっしゃる姿をお見受けして、こうした皆さまのご尽力のおかげで妊娠につながる患者がいるのだと、本当に頭の下がる思いでした。
今回お声がけいただきました大会長の猪鼻達仁先生、座長をお務めくださいました家田祥子先生、そしてご参加くださいました皆さまに、心から感謝を申し上げるとともに、このような機会をいただきましたことを光栄に思います。ありがとうございました。
(担当: 河村 さやか / Fine公認 不妊ピア・カウンセラー)