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不妊治療を取り巻く課題と目指すべき未来とは

患者・当事者の声と今後求めること

不妊治療保険適用後の現状と課題について、アンケート調査の結果を元に情報提供しました。特に未だ変わらない企業や職場における話しづらさや、減らない不妊退職など、仕事と不妊・不育症治療の両立の現状と課題、今後企業に求められる制度と組織風土についてお話ししました。

主催:フェリング・ファーマ株式会社

開催日:2024年6月25日(火)

担当者の感想

今回の啓発セミナーは「保険適用から2年経った今こそ考える不妊治療を取り巻く課題と目指すべき未来とは~行政・医療・当事者の視点から~」というテーマで、フェリング・ファーマ株式会社様主催で開催されました。2024年6月から保険適用になったAMH検査の有用性についてや、保険適用から2年経っての当事者の現状と課題について、多くのメディアに取り上げていただき、広く社会に啓発していただくことを目的としています。

最初にフェリングファーマ株式会社の戸田修司様から「2024年度ペイシャントジャーニー調査結果につきまして」と題してご講演がありました。2022年4月の不妊治療の保険適用開始から2年が経過し、カップルが子どもを持つ決断から妊娠までの平均期間が6.4年から5.9年に短縮されたというデータが提示されました。また、保険適用後、不妊カップルの挙児希望(子どもを持ちたいという願い)の割合が向上し、治療開始に積極的に進む傾向にあることや、職場や雇用者など周囲からの不妊治療に対する理解やサポートが望まれており、特に不妊治療がもたらす感情的な影響(治療の失敗、ストレス、先の見えない不安など)への理解が必要とされていることが共有されました。

参議院議員 和田政宗先生からは、「不妊治療の保険適用までの道のりと、今後の展望について」と題してご講演がありました。

絹谷産婦人科院長 絹谷正之先生からは、「妊娠の仕組みとAMH検査の重要性」と題して、2024年6月から保険適用されたAMH検査についてご説明がありました。一般不妊治療への保険適用により、不妊治療における妊娠率向上につながる可能性が高まること、またAMH検査は1回だけではなく、半年または1年に1回など定期的に検査することで、より精度が高まること、今後の不妊治療ではAMH検査が重要なポイントになることなどが共有されました。

石渡産婦人科院長 石渡勇先生からは、「性教育の重要性、生殖医療の保険化と、医療機関の連携」と題してご講演がありました。日本における少子化の問題の複雑な背景と、さまざまな対策が必要であること、そのためにはまず子どもたち、特に小学生や中学生の時から生物学的な観点で卵子や精子についての知識を学ぶ機会を提供するべきだとご提言がありました。「卵子は倉庫から出荷されるとどんどん数が減少し、老化もする」「精子は常に新しく作られるが高齢になると老化する」というのは生物学的な観点での知識であり、人にとって重要な知識となり得るというご提言が印象的でした。

最後に、私からは「患者・当事者の声と今後求めること」と題して、不妊治療が保険適用になってから、よくなったこと、悪くなったこと、その原因や背景、課題についてお話ししました。特に保険適用で不妊治療が社会に広く啓発されたと思いきや、職場では変わらず不妊治療に対する偏見の目を向けられたり、仕事か不妊治療かの二者択一を迫られたりする当事者が多くいることをお伝えして、未だに減らない不妊退職についての問題点と、今後の改善策などを共有しました。不妊治療当事者だけが仕事との両立が難しいのではなく、育児や介護と仕事との両立も同様に難しく、不妊治療にも育児や介護と同じ制度が利用できれば十分両立ができると思われます。そのために不妊治療だけが特別ではないということをもっともっと多くの経営層と従業員に知ってもらう必要があることを訴えました。

数多くのメディアの方々がご参加されており、未だに不妊当事者の4つの負担(身体的・経済的・時間的・精神的負担)が軽減されていないことに対して再認識をしてくださり、メディアでもこれらの問題を取り上げたいとおっしゃってくださいました。

このような機会を頂戴しましたこと、深く感謝申し上げます。
(担当: 野曽原誉枝 / Fineスタッフ)

Fine(2024年8月9日)

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