不妊当事者の立場から
子宮性不妊の当事者、とくにロキタンスキー症候群の皆さまを対象に実施したアンケート結果をもとに、情報収集や相談の実態、結婚・出産への思い、子宮移植への関心と不安をお伝えしました。
主催:日本移植学会
開催日:2026年9月12日(土)10:35~12:05
担当者の感想
第62回日本移植学会総会の分野別シンポジウム【子宮】「子宮移植―新たな移植医療の展開と未来」にて、NPO法人Fineの松本亜樹子が「不妊当事者の立場から」と題して登壇しました。
子宮移植は、生まれつき、あるいは後天的に子宮を持たない「子宮性不妊」の女性に、自ら妊娠・出産する可能性をもたらす医療です。海外では臨床実施が進む一方、日本ではまだ臨床実施には至っておらず、医学的な安全性だけでなく、倫理面や制度面などさまざまな課題について検討が続けられています。
今回のシンポジウムでは、座長の木須伊織先生(藤田医科大学)・小野稔先生(東京大学)のもと、さまざまな立場から子宮移植についての発表が行われました。木須伊織先生からは国内外の子宮移植の現状と日本での研究の歩み、剣持敬先生からは移植外科医の立場から臨床実施に向けた医学的・倫理的課題、高井泰先生からは国内で臨床研究を適正に進めるための環境整備と委員会の役割、横野恵先生からは移植医療としての倫理的・制度的課題、麻生多聞先生からはアメリカにおける「子宮移植を受ける権利」をめぐる議論について、それぞれお話がありました。
Fineからは、ロキタンスキー症候群の当事者・ご家族を対象に実施したオンラインアンケートの結果をもとに、患者の立場から子宮移植についてお伝えしました。アンケートには24名の方から回答をいただき、情報収集・相談の実態、結婚や出産への気持ち、子宮移植への関心や知識について伺いました。
結果からは、病気に関する情報源がインターネット検索に大きく偏っていることや、「正しい最新情報をどこで得られるのかわからない」といった声があることがわかりました。また、相談相手として実母やパートナーが多い一方で、家族だからこその話しづらさや、周囲に相談することの難しさを抱えている方もいらっしゃいました。
子宮移植については、回答者の半数が「興味がある」と回答しました。しかし、手術のリスクや免疫抑制剤、帝王切開、出産後の子宮摘出などについて一定の認知がある一方、「手術の成功率」や「妊娠しなかった場合」については十分に知られていない傾向がみられました。そして、リスクを踏まえても子宮移植を望むかという問いには、「はい」「いいえ」「わからない」が同数となりました。関心があることが、そのまま「子宮移植を希望する」ということではなく、当事者が自分自身で考え、選択するための判断材料を必要としていることがうかがえます。
自由記述では、「自分の子どもが欲しい」「若い頃にこの選択肢があれば大きな希望だったと思う」という声がある一方、ドナーや自分自身が負うリスクへの不安も寄せられました。また、「自分には間に合わなくても、これから診断を受ける若い世代の選択肢が増えてほしい」という声もありました。こうした一つひとつの言葉から、子宮移植への期待と不安、その両方を抱えながら考えている当事者の姿が見えてきました。
発表では、こうした結果を踏まえ、「『わからない』を『選べる』に変えるために」、学会や医療機関からの正確でわかりやすい情報発信、当事者だけでなく家族への情報提供や心理的なサポート、そして何より当事者の声を聴きながら議論を進めていくことの大切さをお伝えしました。
発表後には、ご参加の医師の方から当事者の現状についてご質問をいただいたほか、「当事者の声を聴くことは大切だと思う」とのご感想もいただきました。また、メディアの方からは「ロキタンスキー症候群について、もっと社会に知ってほしいと思う」とのお声もいただきました。専門家の皆さまが当事者の声に耳を傾け、関心を寄せてくださったことを、とても嬉しく感じました。
今回、このような形で当事者の声を届けることができたのは、デリケートなテーマにもかかわらずアンケートにご協力くださったロキタンスキー症候群の皆さまのおかげです。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
そしてその声を丁寧に集計・整理してくれたFineアンケートチームも、いつもありがとうございます!
子宮移植が日本でどのような形で進んでいくのか、まだ多くの議論が必要です。だからこそFineとして、医療者や研究者だけでなく、実際にその選択肢と向き合う当事者の声も大切にされることを願っています。今回の貴重な登壇の機会をいただきました木須伊織先生をはじめ、関係者の皆さま、ご参加くださった皆さまに心より御礼申し上げます。
(担当:松本亜樹子/NPO法人Fine スタッフ)








