活動を知る

第25回ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)での口頭発表レポート

「Fineの声が世界に届いた日」

(Fine会報誌 2009年 vol.21秋号より)

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会。エシュレ)の第25回学術集会が、オランダ・アムステルダムで開催されました。この学会の患者部門のセッション(会議・発表)で、なんとFineがスピーカーに選ばれ、世界に向けて発表してきました!

不妊に関する学会は国内外に多数ありますが、国際的なものでは二大学会と呼ばれるとても大規模なものがあります。ひとつは毎年アメリカで開催される ASRM(American Society for Reproductive Medicine)。そしてもうひとつが毎年ヨーロッパで開催される、このESHREです。世界中の生殖医療関係者が一堂に会するこの学会。ここで、たとえポスター発表でも、演題が採択され発表できるのは非常に名誉なことだと、以前あるドクターがおっしゃっていました。

私の発表は「医療の質向上のために~患者と医療者の協働~」がテーマ。患者満足度の向上を目的として実施されている「JISART施設認定審査」と、それに「患者審査委員」として参加しているFineの役割と意義について話しました。このような「医療の質向上のための医療者と患者の協働」は、今後の生殖医療において非常に重要であると評価され、今回の発表につながったのだそうです。(発表内容はウェブサイトに抄録を掲載しているので、ぜひご覧ください)

嬉しかったのは、質疑応答が一番活発だったのが、私たちの発表だったこと。知り合いのドクターだけでなく、全然知らない地元オランダのナースが、患者グループインタビューについて質問をしてくれたり、さらに驚いたことに発表が終わってからも、UKやイタリアのドクター、カナダのエンブリオロジストなど、たくさんの人がこの発表に興味を持ってくれ、声をかけてくれたのです!! 正直、私はこんなにも多数の人に受け入れられるとは、想像していませんでした。ホッとしたのと、驚いたのと、うれしいのとで、名刺交換をしながら、ちょっとした興奮状態でした。

次の日は、もう学会の最終日。私たちはカウンセリングのセッションなどに参加し、その後、展示会場でランチをとっていました。すると、とってもかわいらしい女の子が、ニコニコしてこちらに近づいてきます。彼女はまっすぐ私の前に来て、「あなたの昨日の発表、とってもよかった! 感動したわ!」と、握手を求めてくれたんです。聞けばベルギーの助産師さんとか。あまりにもびっくりしました。びっくりを通り越して、もう「仰天」です。

この感激はホント大きかったです。たとえ日本の学会だって、発表当日ではなくて後日にこんな風に声をかけてもらうなんてこと、滅多にありません。なんだかもうこれだけで、昨日までの1年間の苦労がすべて報われた気になりました。大げさでなく、ほんとに「ウルウル」してしまいました。私たちのやっていることを、国際的にも認めてくれる人がちゃんといる。意義深いことだと言ってくれる人がいる。これからも頑張ってと、応援してくれる。そして、それが"患者以外の人"……。そう、これがすごいこと。

私たちはこれまでいろんなことを「患者=仲間たち」に伝えることを一番に考えてきました。それはとても大切で、大きな使命だと思っていたからです。でも、「患者以外」のたくさんの周囲の人々に伝えることも、やっぱり同じぐらい大切なのだと、改めて思い知った気がしました。それでこそきっと、本当の意味での「患者を含めたチーム医療」の実現ができ、「医療の質の向上」につながるんですよね。そのためにもこうやって思い切ってチャレンジし、外に出ることは、大きな意味を持つことなのだと、実感したのです。

ああ、そういえば、Fineのきっかけはまさにそれだったな、と懐かしく思いだしました。私たちは当初、不妊に悩む仲間だけで集まっていろんな話をしていました。「不妊ってつらいよね」「病院通いって大変だよね」「周りはわかってくれないよね」「治療ってお金かかるよね」「こないだこんなこと言われちゃったんだ」「ああ、それはキツイよね。わかる~」などなど。仲間同士で話せることは安心や共感でいっぱい。気持ちが救われます。でも。「ここで仲間同士だけで話をしていたって、世の中はちっとも変わらない」「私たちには、わかってもらいたいことがあり、伝えたいところがある」そんな思いに行き当たったのです。

一人ひとりの声は小さくて、どこにも届かないかもしれない。でも、その声を集めれば、きっと大きな声になる。そうやって大きくなった声なら、きっと聞いてくれる人がいるに違いない。「だから、怖がらないで声を出してみよう」「みんなの声を、集めよう!」そうやって、5年前、Fineは生まれたのです。

「初心忘れるべからず」。大切な思いを、また新たにしました。その意味でも私にとって、とても有意義な経験だったといえそうです。 1年間準備にアタフタしてよかった~。ESHREよ、ありがとう!

このESHREの発表については、帰国後も国内外から問い合わせやご連絡をいただくなど、おかげさまで良い反響をいただいています。これも普段のFineのスタッフはじめ、メンバーのみんなの力だなぁと、しみじみ思っています。メンバー。つまり、これを読んでくれている会員の皆さんです。私たちFineの活動のすべては、私たち、つまりあなたの声から始まっています。これからも、いつでも、私たちにいろんな声を寄せてくださいね! 

Fine (2009年10月20日)

ページの先頭へ