不妊・不育症を通じて体感した多様性の大切さ
中学校3年生向けに不妊・不育症の基礎知識と、治療経験から実感した命の大切さや多様性尊重の重要性をお話ししました
主催:長久手市立北中学校
開催日:2021年11月5日(金)
担当者の感想
この講座は、同校で受験や卒業を控えた3年生向けに「生や性、命について学び」「自己肯定感、自分も相手も大事にする心を育む」ことを目的に毎年実施されているそうです。全7講座のうち、今回は新講座として不妊をテーマに取り上げてくださり、Fineにお声がけをいただきました。日本経済新聞に掲載されたFine理事長の記事をご覧になり、連絡をくださったそうです。打ち合わせ当初より、不妊症に関するお話を通じて命の大切さを伝えたいというご要望をいただいておりましたが、教諭の方と相談を進める中で、私が不育症経験者であること、また出産を経て育児と仕事を両立しながら暮らしていることから、前半は「不妊・不育症について」「治療当事者のつらさ」「出産、産後の家事育児について」、後半は「不妊・不育症治療、育児経験から得た気づき」「さまざまな事情や価値観を尊重するためにはどうしたらよいか」という内容で講演させていただくこととなりました。
当日、前半は、不妊・不育症について知ってもらうことが第一の目的でしたので、中学生に当事者の現状を知ってもらい、将来に備えてもらうことと、当事者への理解を深めてもらうことを目指しました。また、自分が生まれてきたことも無事に成長できたことも奇跡の連続であること、親としての苦労や気持ちから、自分の心も体も大事にしてほしいというメッセージを伝えました。
後半は、私が不妊治療や出産・育児を通じて感じたつらさのうち、「固定観念」について具体的なエピソードを交えてお話ししました。結婚したら妊娠、妊娠したら出産、出産したら女性が家事育児するのが当たり前という固定観念が当事者を苦しめる場合があること、不妊・不育症に限らずさまざまなつらさを抱えた人が身近にいるかもしれないこと、環境や経験によって考え方や価値観も人それぞれであり、お互いに尊重し合うことが必要であるとお話ししました。
終了後、生徒さんたちからお手紙をいただきました。不妊・不育症については、「お母さんも同じ経験をしていた」「意外と身近な問題なんだと思った」「身内に治療中の人がいる。自分の言動を考えるきっかけになった」「男には関係ないと思っていたけど間違いだと気づけた」「将来パートナーのために最良な対応ができるようになりたい」などの感想がありました。出産・育児については、「産後は休みなしで育児をすると聞いて親に感謝しようと思った」「パートナーとの支え合いが大切だと思った」、また、多様性については、「女性なんだから、母親なんだからという決めつけは、言った側が思っている以上に言われた側を傷つけるんだと学んだ」「相手を気遣う言葉のかけ方を知れたので、明日から実践したい」「固定観念に流されずに、将来パートナーと価値観、理想を話し合って生きていきたい」など、それぞれの心に留まった点について感想が書いてありました。
中学生にとって妊娠、出産、育児はまだ先の話ですが、今のうちから学校や家庭で話題にあげてもらうことが社会における理解促進に繋がっていくと思います。今はすべてを理解できなくても将来、「中学生の頃にそんな話聞いたな」と少しでも思い出してもらえたら幸いです。また、自分を大事にすることはもちろん、周囲の人のことも大事にできるようになってもらえれば嬉しいです。
今回、長久手市立北中学校教諭の皆さまが不妊・不育症というテーマを取り上げてくださったことは当事者として大変嬉しく、また当事者以外の人や次世代の人にも理解を広めていくために非常にありがたい機会でした。
現在・過去・未来の不妊・不育症の当事者支援の一環として、今後もこのような若年層に向けてお話しする機会に積極的に取り組んでいきたいと思います。
(担当:島村 洋子/Fineスタッフ)