不妊について

不妊体験談「ふぁいん・すたいる」

「仕事をする私の不妊治療」
USAKO さん
結婚2年を待って不妊専門クリニックへ

私が現在39歳、仕事は看護師をしています。幼い頃から子どもが好きで、「結婚する相手は絶対子どもが好きな人がいい!」と、子どもと遊ぶお父さんをイメージしながら、31歳で3歳年上の夫と結婚しました。

医学的に不妊と定義されているのは、結婚して2年間妊娠しない状態のとき。そのため2年目の結婚記念日を待って、私と夫は不妊専門クリニックを受診しました。検査の結果、夫婦ともに異常は見つからず、タイミング療法を1年間、人工授精を5回行いました。しかし妊娠には至らず、5回目の人工授精を終えたときに、医師から「体外受精」をすすめられました。 私の周りには、体外受精で子どもを授かった友だちがたくさんいたので、「私も体外受精をすれば、すぐに妊娠できる」と思っていました。

体外受精にチャレンジ

2012年3月、36歳で初めての体外受精をしました。それから2年半の間に採卵を8回、受精卵を子宮に戻す胚移植を8回し、まだ一度も陽性反応が出たことはありません。

人工授精の頃とは違い、体外受精の治療中は病院へ通う回数が増え、急に仕事を休むことが多くなりました。また私の場合は、採卵の後はおなかが痛くて1週間は仕事ができない状態に。胚移植の後も「着床日にあたる頃はゆっくり過ごしたい」という気持ちがあり、日時の指定や責任ある仕事を受けることができなくなりました。病院外からも講演の依頼を多くいただいていたのですが、今はそのほとんどをお断りしています。

すぐに妊娠できると思っていたのに、予想外に長期に及んでしまった不妊治療。 適当な理由をつけて仕事を断ると、今まで培ってきた信頼を失いそうで、「不妊治療のために予定が立たないです」と隠さずに伝えています。

一緒に働く医師や看護師、その他の医療チームメンバーにも治療していることを伝えていますが、このことで嫌な思いをしたことはありません。

かなり迷惑をかけているにもかかわらず、「今は妊娠のことを一番に考えて」「応援しているから」と言ってもらえることのほうが多く、皆のやさしさが心にしみます。

何もかも中途半場に感じてしまって・・・

不妊治療を続けていると先の予定が立てにくく、それによってキャリアも足踏み状態です。 仕事も趣味も、何もかもが未確定で、中途半端のように感じることが多いのです。

採卵の負担、ホルモン剤の影響、治療による精神的なストレスなどで体調もととのわず、「このままでは、私の人生がどうにかなりそうだ・・・」と思うことも。

また、治療にトライしているのに妊娠しないという失敗体験を、何度も何度も繰り返すうち、防衛する気持ちも働きます。

たとえば「子どもができることのデメリットと、できなかったときのメリット」を探す癖がついてしまったこと。

不妊治療をして待望の子どもを授かったのに、育児でイライラしているお母さん。自分の時間が取れない、思うようにならない、なんで子どもを産んだんだろう・・・そんな姿を見聞きして、「私は本当に子どもが欲しいのだろうか?」と思うときもあります。

でもやっぱり私はお母さんになりたい。

子どもを諦めることを考えると、なぜか、ものすごく悲しい気持ちになるのです。

これが母性なのか?

育児があんなに大変そうなのに、私まだ、お母さんになりたいと思っている。

私の夫を「パパ」と呼んでくれる子どもがほしい。ああ、これは理屈ではないのだな、と実感しています。

どこまで治療を続ける? これからの私たち

昨年の夏、5回目の移植が終わった時、私は「どこまで治療を続けるのだろうか」と考えました。もし私が、通っている病院の看護師で、治療をしている自分の姿を見たら、何と言葉をかけるだろうか?と想像してみたのです。

医学的なこと、仕事のこと、体のこと、金銭的なこと、いろいろ考えたうえで、「移植は10回ぐらいにして、それでダメなら、あとは夫婦で旅行をしたり、仕事も趣味もめいっぱいやって楽しく暮らしたら?」と言ってあげるかな、と思いました。

そして、主治医に「あと5回移植したら治療をやめる」と伝えました。

たくさんの人が応援してくれています。もちろん子どもを授かることが一番の望みですが、どんな結果になったとしても、私たちの人生は楽しいものになるに違いないと信じています。

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